国際通貨基金(IMF)が行った日本経済の「健康診断」…意外な結果に、黒田日銀総裁はどう反応するのか
IMFの声明
「長期金利の一層の柔軟化は、将来の急激な金融政策の変更を回避するのに役立つだろう」――。
国際通貨基金(IMF)は1月26日に公表した「2023年対日4条協議終了にあたっての声明」で、こう述べて、日銀が1月17日、18日の開催の金融政策決定会合で見送ったイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の柔軟化を要求した。

その理由は、「上振れリスクのほうが大きい」という先行きのインフレ懸念と、目立つ現状の政策の副作用だ。
あわせて、このところ、大方の市場の観測を無視して大規模な金融緩和を続けてきた日銀に対して、将来の政策変更の前提条件について明確なガイダンスを提供することによって、市場との十分なコミュニケーションに尽くすよう迫っている。
今回の声明は、黒田日銀総裁の下で最後の開催となる3月9、10日の金融政策決定会合の議論の行方を直接的に縛るものではない。だが、少なくとも、4月8日に任期を迎える黒田総裁の次の総裁が黒田路線からの離脱を始めることに対して、IMFが強いお墨付きを与えたものとしてテイクノートしておく必要がありそうだ。
IMFは、国際金融や外国為替市場の安定化を目的として活動している国際機関だ。国連の専門機関でもある。
4条協議は、その国際機関が定期的(通常年1回程度)、もしくは非定期的(IMFが支援の要請などを受けた際に行う)に加盟各国と行う個別の協議だ。対象国の経済状況のほか、財政、金融政策などがチエックのテーマであり、例えるならば1国の経済の健康診断のようなものである。
したがって、協議後の「声明」も、加盟国にとって、直接的な強制力がないとはいえ、黙殺することも難しい。そのことは、IMFにおいて、米国に続いて出資比率第2位という大国としての発言権を持つ日本にとっても同じであり、敬意をもって対応すべきものと言える。