韓国の30~40代がもっとも好きなアニメは何かご存じだろうか。それは日本の井上雄彦氏原作の『スラムダンク』だ。BTSのメンバーも自身が持つバラエティー番組などで、『スラムダンク』への愛をたびたび語っている。韓国では、正月明けの1月4日から劇場版アニメ『ザ・ファースト・スラムダンク』が公開され、大ヒットを呼んでいる。観客数は封切り2週間で100万人を突破し、書店では特設コーナーが設けられ、バスケ関連のグッズの売り上げも急激に伸びているという。

一般人の目線での韓国情報を配信している韓国人YouTuberのジンさんも子どもの頃『スラムダンク』を見ていた世代だ。

「私も小学生のときにアニメを見ていました。もう少し上の当時中高生だった、現在40代の人たちにとっては、青春を象徴する漫画のひとつだと思います。『スラムダンク』は韓国の歴代アニメランキングで3位にランクインしていて、視聴率36%という記録を持っています。今回の映画のヒットに関して、政治経済などを伝えるお堅いニュース番組でもトピックスとして扱っていたりします。

劇場版『THE FIRST SLAM DUNK』中。映画関連のグッズだけでなく、漫画の単行本、バスケットボールやユニホームなどの売り上げも伸びているという。photo/iStock

そして、『スラムダンク』の人気だけでなく、日本への観光旅行も韓国ではブームになっています。メディアなどの論客の方たちは政治などと絡めて、批判や皮肉を交えた意見を今も言っていることがありますが、文在寅政権時代に言われた『NO JAPAN』への意識は、一般の人たちの間では、ほぼなくなっています。私の友人や知人も、またネットで30代以下の人たちのコメントをみると、日本に対する批判的なコメントは実際にはとても少なくないです」

一般人の意識などを織り込みながら、ジンさんに今の韓国の日本への意識について解説してもらった。

取材・文/上田恵子

 

日韓関係は本当に悪いのだろうか?

少し前まで韓国では、「NO JAPAN運動」として、日本製の物を買わない、消費しないという動きがありました。対象は車やブランド品、日用品、食品などに及び、一時は社会的な問題にもなっていたものです。

その後コロナ禍となり、物理的にも行き来ができなくなった両国ですが、ここへきて状況は回復。ビザ無しで、韓国から日本へ行けるようになりました。そして現在韓国では、多くの人が旅行先に日本を選んでいます。

日韓関係は悪いと決めつけている方が多いですが、そもそも日本と韓国は協力し合っている国どうしでもあります。これは政治家も認めていることで、つい先日も日韓で会議をしていましたよね。もちろん違う国なので小さな問題はあれこれ起きます。でも、必要以上に仲が悪いと強調される背景には、それを政治利用したい人がいて、お金儲けをしたいメディアが大げさに騒ぎ立てるからです。そのほうが怒りの感情などで話題になる、記事が読まれるということで、不仲を強調している部分も多いように感じます。

photo/iStock
 

そして、「仲が悪い」と声高に言っている人は、そういったネガティブな記事しか読みません。たとえ「実はこんなに仲が良いんですよ」「日本の〇〇がヒットしている」という記事があっても、「いや、そんなことはない!」「何か裏がある」と認めないんですね。私のYouTubeチャンネルを観てくださっている方たちは、日韓に関する悪い記事も良い記事も読んでいて、客観的な視点を持って判断している印象がありますが、社会にはそうではない人もたくさんいます。

NO JAPAN運動に話を戻しますと、盛り上がっていた当時は、居酒屋でアサヒビールを飲まなくなったり、デサントやユニクロといった韓国でも人気のある日本製品を買わなくなったりしていました。韓国でデサントは、高級ゴルフウェアとして人気があるんです。が、現在はコロナ禍前の80~90%くらいまで消費が回復しているという報道がありました。さらに10月11日からは、ワクチンなしでの日本入国が可能になり、再び自由に旅行できるようになって日本旅行熱も加熱しています。