2023.02.01
中国の「南」の民が「北」の民に抱く“警戒と反骨”…日本人が知らない「もうひとつの中国」を解明する
中国の社会も歴史も、「南」から見なければわからない――。
『越境の中国史 南からみた衝突と融合の三〇〇年』(講談社選書メチエ)で、歴史学者の菊池秀明氏は、福建・広東・広西などの華南地方こそが中国世界のフロンティアであり、ここに生きる人々の「越境のエネルギー」こそが中国近代史と経済発展の原動力だった、という。
日本人には見えていない、「もうひとつの中国」とは? 言語・民族から歴史まで、「南の中国」を知るルポライター・安田峰俊氏が、その現状と台湾・香港問題の背景を解説する。
中国の”標準語”を音声入力する難しさ
近年、私と中華圏の友人との連絡はもっぱらメッセンジャーアプリを使っている。中国大陸の人は微信(WeChat)、白紙運動に加わるなどした反体制系の中国人はTelegram、在米華人はWhatsAPP、香港人や台湾人はFacebook MessengerかLINE……と、プラットフォームは違うが、操作方法やマナーはあまり変わらない。通知が来たら素早く返事をしたほうがよく、ぶっきらぼうな返信ではなくそれなりの「会話」をする必要もある。
だが、スマホの小さな画面で中国語のピンイン(発音を表記したアルファベット)を打ち込むのは骨が折れる。そこでiOSの音声入力を使うのだが、これが曲者だ。私の中国語は教科書的な発音から離れているらしく、普通に喋ると言葉をきれいに拾ってくれないのである。仕方なく、語学の授業の音読のようにゆっくりした読み方で、一音一音「標準的」な発音で喋ることになるのだが、その姿はわれながら間抜けであった。