「買い物は投票だ」といいますが、何をどう選ぶのか、買い物の基準は人それぞれ。気になるあの人は、どんな視点で選択するのでしょうか。俳優、作家など5名に、2022年、買ってよかったものを聞きました。
お話を伺ったのは……
菊池亜希子さん、日野明子さん、岩井巽さん、内沼晋太郎さん、岸田奈美さん
家族の一員のような気持ちで
責任を持って迎え入れる。
「スキってなったら“責任を持って引き受ける”ような気持ちでお買い物をしています」と、菊池亜希子さん。「サステナブル」という言葉を知ったのは、大学生のとき。
「建築、都市、街並みのデザインを(ハード面もソフト面も)学んだことは、自分の考えが持続可能なものかどうか、シンプルに、長く愛されるものであるかどうか、という視点を持つきっかけになったと思います」
買い物は「賛成」「イイネ!」という意思表示のひとつとの信念のもと、何を選んで、どんな作り手にお金を払うかを考えているという。そんな菊池さんが最近買ってよかったものは、裁断クズからアップサイクルした〈UpcycleLino〉のデニムセットアップと、旅する八百屋〈青果ミコト屋〉が日本中で出合った食材を使用して作っている〈KIKI NATURAL ICECREAM〉のアイスクリーム、木製ビーズを使ったハンドメイドの〈UPBEADS〉の携帯ストラップ。
「買い物をするときは、末長く、家族の一員として迎えるような気持ち。あとは作られている背景に共感できるかどうかを重視します。自分だけではなくて、“社会全体が気持ちいい”ものになるような買い物をしたいなと、最近特に思います」
〈UPBEADS〉の携帯ストラップ

ドイツ・ハンブルクで、環境にやさしいものづくりをしている携帯電話用チェーンのブランド。FSC認証を取得した木製ビーズを使ってハンドメイドされる。「ストラップが1本売れるごとに1本植林されるそう。ナチュラル、ホワイト、レッドの3色を持っていて、洋服に合わせて替えています。ホワイトを一番よく使います」
〈KIKI NATURAL ICECREAM〉のアイスクリーム

規格外で弾かれたり、ロスになったりした作物を積極的に使用するクラフトアイス。「その取り組みに、おいしいアイスを食べる人として参加できるなんて、こんな素敵なことはないなと思い、せっせと食べています。ピンクペッパーとローズ、ケールと和ハッカなど素材の組み合わせが絶妙で、食べていてワクワクします」
〈UpcycleLino〉のデニムセットアップ

地球にやさしい“天然素材”をコンセプトに服づくりを行う〈nest Robe〉のアップサイクルシリーズ。「洋服の裁断クズを糸にして再び洋服を作る、サステナブルな取り組みに注目しています。違和感なく日常のワードローブに溶け込んでくれるところも、頼もしい」
PROFILE
菊池亜希子 きくち・あきこ
モデルデビュー後、俳優として映画、ドラマ、舞台、CMに出演する一方、エッセイやイラストなど多方面で活躍。編集長を務めた『菊池亜希子ムック マッシュ』(小学館)のほか、著書に『へそまがり』(宝島社)、『好きよ、喫茶店』(マガジンハウス)など。
デザインはいいけど主張しすぎず
空気に馴染むぐらいのものがいい。
自身を「捨てられない性格」と評する日野明子さん。直感は大切にしつつも吟味して買う。選ぶポイントはデザインがよく、できれば自然素材、でも主張は強くないもの。使い勝手、触り心地も大切。そうすると必然的に、知り合いの作り手のものが多くなる。最近は外食が減ったぶん、生活用具を充実させたという。
「いいものを作っている人への応援も込めて。ふとんもちゃぶ台も毎日を幸せにしてくれますし、ちょっと高いものは、満足感が倍増。自分へのご褒美です(笑)」
〈家具工房 伊庭善〉のちゃぶ台

北海道美瑛町の家具工房が手がけたちゃぶ台。「φ90をずっと使っていて、小さいサイズもほしくなりφ45を購入。丁寧な仕上げで、作者の顔もわかるので安心。一人暮らしの座卓としてはちょうどいいです。国産の楢に拭き漆の仕上げ。脚は折り畳めて、昭和の懐かしさを感じる机です」
〈mani e cotone〉の和綿ふとん

兵庫県丹波篠山で育てられた無農薬の和綿のふとん。「正直、高いです! が、作り手を訪ね、世界の綿栽培事情なども聞き、オーガニックの綿栽培、採取、ふとんにするまでの苦労を聞き、値段に納得して入手しました。ふとんは打ち直しをしたら使い続けられるのもいいですよね」
PROFILE
日野明子 ひの・あきこ
大学時代に工業デザイナーの秋岡芳夫氏にものづくりの面白さを教わる。1990年代に入社した商社は、無鉛クリスタルのiittalaの輸入代理店で、日本のクラフト製品も扱った。1999年に独立後、企画卸、産地アドバイザー、物書きなど、日本のものづくりに関わる。