差別、誹謗中傷、ポジティブ、ネガティブ、うつ、ジェンダー……様々な切り口から、自身の体験と合わせて「脳の暗部」を浮かび上がらせている一冊が、中野信子さんの『脳の闇』だ。本書より抜粋掲載する2回目は、第7章「女であること」より、ジェンダー差の意識について伝えている。
前編「脳科学者・中野信子が「女の魅力と才能は両立しない」という研究結果に思うこと」では、美しさや女性らしい魅力と才能は共存しないとばかりの「ステレオタイプ脅威」が存在することを、1979年の研究結果を入り口にお伝えした。そして、女性であることと真っ向から向き合い、しんどさと格闘する人として田中みな実さんの力を感じるという。それはどんな力なのか。
田中みな実さんと話した「女子アナの出口戦略」
実は以前、彼女と話す機会があり、かなり突っ込んだ話もした。ざっくりいうと、女子アナの出口戦略、といったような内容と言えば概ね正しいだろう。
仕事と家庭の両立、というのはそれぞれのスタイルがあり正解がない。家庭を持つことが良いとも悪いとも言い難い時代だ。もちろん家庭を持つことの喜びを味わいたいという気持ちはごく自然なもので、彼女にもその願望がある。

ただ、これは望ましい結末を得るのに、一人で努力できる要素以外の因子の占める割合が大き過ぎる。この点が、一般的に結婚と家庭生活に関わる諸問題をややこしくしている。自分の努力または工夫だけで何とかなる課題は、ある意味やさしい。コントロールするのは自分一人で済むからだ。
しかし相手がある問題はそうはいかない。自分一人をかなりの精度でコントロールできる、思考の腕力とでも言うべき力の強い人なら、よりその「ままならなさ」に疲弊させられてしまうだろう。家族や恋人と言っても他人であり、どれほど愛して信頼していても、別の意思決定機構を持った個人なのだ。