「毎日入る家のお風呂も『道』になる」放送作家・小山薫堂さんが語り尽くす「『湯道』の極意」

お風呂っていいなあ

日本人にとっては当たり前の「入浴」は、湯に浸かる点で日本独特の文化でもある。

その精神と様式を突きつめ、これを茶道や華道のような「道」と体系づける「湯道」を、大の「お風呂ファン」である放送作家の小山薫堂さんが提唱している。

伝えたいのは「お風呂は人を幸せにする」というメッセージ。

「湯道」の初代「家元」を名乗り、一般社団法人湯道​文化振興会を立ち上げ、全国の名湯を自ら巡り「湯道百選」シリーズとして紹介してきた。それは「源泉かけ流し」の温泉に限らない。銭湯も、共同浴場も、家の内風呂も、それぞれの楽しみ方がある。「お風呂っていいなあ」を伝えるべく、小山さんは映画まで作ってしまった。原案・脚本を手掛けた『湯道』(鈴木雅之監督)は2月23日全国公開される。

 

もともと風呂好きで、朝の長風呂でアイデアがひらめくのを待つという習慣を持つ小山さん。

「湯道」を思い立ったのは、経営を引き継いだ京都の老舗料亭、下鴨茶寮で垣間見た茶道の世界が一つのきっかけだった。

日常的な飲み物であるはずのお茶が、どう飲むかで『茶道』という高尚な文化芸術となる。ならば毎日入るお風呂も、『道』になるのではないかと。ただ清潔にする、きれいにするための入浴ではなく、何か別の価値が生まれるのではないかと考えました

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「湯道」の活動はBSフジで足掛け14年、300回以上も続いている長寿番組「小山薫堂 東京会議」から始まった。2015年に大徳寺真珠庵(京都市)の山田宗正住職から、「湯道温心」という、「湯は心を温めるためにある」という「湯道」の基本を示す言葉とともに掛け軸を拝受し正式にスタート。その後は、伝統工芸職人による、湯桶など各種「湯道具」の制作と百貨店でのポップアップ店の展開、イタリア・ミラノの見本市「ミラノサローネ」への出展に加え、宮崎市のフェニックス・シーガイア・リゾートに公認の「湯室」を設けるなどした。

2018年からは雑誌『Pen』で「湯道百選」の連載を始め、温泉、銭湯、共同浴場を問わず全国の名湯を紹介している。個人的に好きな湯のほか、読者から提案があった湯などを随時、巡っている。銭湯や温泉、家風呂と、それぞれの楽しみ方は違うのだろうか。

同じものを求めてはいけないと思いますね。温泉では湯の質や周囲の景色を愛でるとともに、建物や設備のしつらえの美しさ、造った工芸職人の技を堪能する。銭湯には、お店の人やお客さんなど人と接する喜びがある。家風呂は、自分自身がその日にあった出来事や思いを反芻する場所としては最高。共通するのは、湯に浸かる喜び、湯に対する愛です

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