前の記事『大学が学生45人を訴えた…!名門・京都大学でいま起きている「深刻な異変」』では、京都大学で勃発した学生対大学の訴訟トラブルについて取り上げた。引き続き『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書)より京都大学の異変について明かそう。
まさに「理不尽」
一方、吉田寮の寮生から見れば、現棟は住めないほど老朽化しているわけではない。一定の耐震性能もあり、適切な補強によって継続して使用できることが、2005年の耐震調査結果の分析でわかっている。長年続けてきた老朽化対策についての話し合いを一方的に打ち切ったのは大学側であり、大学側から訴えられることは理不尽な仕打ちでしかなかった。
そもそも現棟の補修は、2000年頃から吉田寮の自治会と大学執行部の間で、団体交渉によって話し合われてきた事項だった。
交渉では2015年までは「確約書」が交わされ、「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上で決定する」ことや、「入退寮者の決定については、吉田寮現棟・吉田寮新棟ともに現行の方式を維持する」ことなどが確認されていた。

ところが2017年12月、大学は突然方針を変えた。「吉田寮生の安全確保についての基本方針」を公表し、老朽化の下で「可能な限り早急に学生の安全確保を実現する」ことが喫緊の課題であるとして、新規入寮の停止と全寮生の退舎を求めたのだ。