なぜ「京都大学の自治」は踏みにじられたのか…重要書類からわかった「弾圧」の正体

前の記事『突然立ち入り禁止を宣告されて…日本屈指の名門・京都大学で起きる「寮生対大学」訴訟バトルの内幕』では、京都大学の学生寮である吉田寮で何が起きているのか取り上げた。引き続き『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書)著者の田中圭太郎氏によるレポートをお送りする。

吉田寮を否定していた「監査報告書」

大学が大勢の学生を訴える異常事態に、教員も大学に対して異を唱えた。大学が提訴した後、40人以上の教員有志が呼びかけ人となり、吉田寮の問題について対話による解決を求める要請書を当時の山極壽一総長に提出した。

要請書では、次のように苦言を呈している。

これまでの合意を全て反故にすることは、学寮の自主性と学生との信頼関係を重視する立場から「確約書」に署名してきた元学生部長・副学長たちの努力や、大学当局と寮自治会の関係調整に腐心してきた職員の方々の労苦をも全否定になりかねません。

写真/田中圭太郎写真/田中圭太郎
 

この文面にあるように、歴代の教員と吉田寮自治会の間では一定の信頼関係が築かれてきた。前述の確約書はその一つの証拠だ。にもかかわらず、大学が2017年12月に新規入寮の停止と全寮生の退舎を求めた際や、2019年4月に寮生らを提訴する際、教員への説明は一切なかった。

関連記事