「国債利回り上昇に日本の財政は耐えられない」の短絡、嘘を暴く

金融・財政の原則無視の俗説に騙されるな・後編
【前編・「金利上昇で日本銀行は破綻」という、メディアが騒ぐ「トンデモ論」を斬る】では、金利上昇、国債利回り上昇に伴い、日本銀行が債務超過になり、信用失墜するという、今、一部の経済メディアや経済評論家が語っている俗説を否定した。後編ではもう一つの俗説、日本の財政破綻説について検証していきたい。

極めて一面的な財政議論

関連して最近気になるもうひとつの議論についても述べておこう。「日本政府の債務としての国債発行残高は1026兆円(2022年度末見込み)に膨張し、国債の平均利回りが1%上がっただけで、年間約10兆円も利払いが増加し、債務が雪だるま式に増えて行く」という主張だ。

これは全くのトンデモ論とまでは言わないが、考慮すべき複数の要因を見落としている非常に一面的な議論だ。この問題をきちんと理解するためには財政の「プライマリーバランス」(以下、PBバランスと記す)という概念について理解する必要がある。

図表1は財務省サイト「財政を考える~参考資料3、プライマリーバランスとは何か~」から切り取った説明図である。この図が示す通り、PBバランスとは、歳入面からは新規の国債発行による分を除き、歳出面からは期日の到来した国債の償還元本と年間の利払いを除いた歳入歳出の収支のことだ。双方を除いて収支が均衡する状態を「PBバランス均衡」と言う。一方、PBバランスに利払い分を歳出に加えた収支は「財政収支」と呼ばれている。

 

PBバランスは日本の財政が、利払いが増加して雪だるま式に膨張するかどうかを考える上で重要な概念である。

政府債務の大小は、その国の経済の規模との比較で議論する必要がある。通常これは政府債務と名目GDPの比率で議論できる。利払いの増加で政府債務が雪だるま式に膨張するかどうかは、政府債務がGDPとの比率で大きくなり続けるかどうかで判断することができる。

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