第62作目となるNHK大河ドラマ『どうする家康』が、1月29日に第4話までのオンエアを終え、物語はいよいよ軌道に乗ってきた。
老獪な“タヌキおやじ”のイメージが強い松平元康(のちの徳川家康)を、大河ドラマ初主演の松本潤が戦嫌いの気弱で頼りない男子として演じたり、まるでゲーム画面のようなCGとVFXを駆使したりといった新しい試みは、いい意味でも悪い意味でもさっそく話題を振りまいている。
歴史ある大河ドラマには、昔ながらの重厚なトーンの時代劇を求めるファンも多く、若い視聴者層を取り込みたい制作陣の思惑との間にしばしば齟齬が生まれるが、本作も一通りの賛否両論は出揃ったといえるだろう。
まだ現段階ではなんとも判断がつかない部分が多いが、筆者はこの新しい大河ドラマに大いに期待をかけてみたい。
その理由は、本作の脚本家が『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』などを手がけた古沢良太だということ。これまでさんざん大河ドラマや時代劇の題材としてコスられ尽くしてきた戦国時代、それも従来の徳川家康の立身出世・天下平定の物語を、いい意味で裏切ってくれるのではないかと思うからだ。
戦国時代は臣従と離反を繰り返す下克上のコン・ゲーム
まず注目したいのは、そもそも戦国時代が、臣従と離反を繰り返しながら下克上を目指すという意味で、一種の“コン・ゲーム”(信用詐欺、転じて詐欺や騙し合いによる頭脳戦・心理戦を通して二転三転する物語ジャンルを指す)のような時代であるという点だ。
一方で、古沢良太は言わずと知れた『コンフィデンスマンJP』の脚本家。ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の3人組のスゴ腕信用詐欺師が、善良な一般人から金を巻き上げる悪徳なターゲット=オサカナを壮大な計画で釣り上げ、巨額の富を騙し取る姿を痛快に描き、今やすっかりフジテレビのドル箱コンテンツとなった。
つまり『どうする家康』は、どこまでが味方で、いつ誰が敵に寝返るかわからない戦国時代の混沌とした情勢を、騙し合いとどんでん返しの連続であるスリリングなコン・ゲームとして描いてくれるのではないかと期待できるのである。