「消費増税の口実が見つかった」…思いつきの「少子化対策」議論に財務省がほくそ笑む理由がひどすぎる
一人当たりGDPは低下しない?
週明けの国会は、荒井首相秘書官の不適切発言を巡る論戦で持ちきりになるだろう。もっとも岸田政権の動きは速く、すでに荒井秘書官を更迭している。
荒井秘書官の発言は2月3日夜のことで、発言を記事にしないオフレコが前提だったが、「公益性がある」とした毎日新聞が同日22時57分にネット配信した。その後荒井秘書官の釈明が行われたが、これはオンレコだったため各社ともに報じた。
荒井秘書官の発言は個人的な話で、居酒屋でやるような種類のものだから、オフレコ会見でも話すのかと驚いた。オフレコを破って「スクープ」した毎日新聞にも驚いたし、岸田首相も息子ではないからと素早く更迭したことにも驚いた。
本コラムではそうしたスキャンダラスな話でなく、話題になっている児童手当の所得制限について述べよう。
発端は岸田首相が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と述べたことにある。その後、これを受けて自民党の甘利明前幹事長が、財源として消費税の増税に言及した。
まず、天の邪鬼な筆者にとって、少子化対策はその必要性が胸にストンと落ちない。人口減少しても、一人あたりGDPが必ずしも低下するとは言いがたいからだ。
世界で人口減少している国は30ヵ国程度あるが、一人あたりGDPが成長している国は少なくない。最近の世界各国の人口成長率と一人あたりGDP伸び率の関係を示した下図を参照してほしい。端的にいえば、人口減少しても経済成長しないとはいいがたく、ロボットでかなりの程度補えると思う。

人口動向の根本要因が分からないにもかかわらず、経済的理由であるという仮説から、政治家のみならず在野からも、金銭要因による人口増を誘導する政策提言がおびただしく持ち上がっている。少子化対策ほど、客観的なエビデンス・ベースト・ポリシーからほど遠い分野もなく、なんでもありの世界だ。