2023.02.13

いま「日本の国公立大学」で起こっている、パワハラ・大量解雇の「異常な実態」

まともな研究が不可能に

全国の大学では国による統制やトップによる独裁化が進み、弊害としてハラスメントの横行、非常勤教職員の大量解雇などの問題が起きている。背景にある大学政策と、大学崩壊の現状をレポートする。

大学・学生の自由が奪われている現状を紹介した前編『日本の最高学府の「大崩壊」が始まった…京大ほか国公立大で起きている「ヤバすぎる事態」』に引き続き、まずは文科省OBの結城章夫氏が学長を務めている山形大学で、立て続けに起こったトラブルの内情を紹介しよう。

雇用破壊の「最前線」

'16年に設置したリチウムイオン電池の研究開発拠点「山形大学xEV飯豊研究センター」では、センター長による複数の職員に対するパワハラが明らかになった。しかしセンター長への処分は減給約1万円と軽かった。

米沢市に'11年に開所した工学部有機エレクトロニクス研究センターでも、教授によるパワハラが発覚した。国が求めるベンチャー企業の立ち上げに山形大学も参加し、実績を出そうとしていたが、実態はずさんなものだった。同センターの関係者が証言する。

「教授は着任したスタッフにいきなりベンチャーを立ち上げろと指示します。けれども、資金を出すわけではありません。スタッフに個人的に多額の借金をさせた上でベンチャーを立ち上げるように強要するのです」

Photo by gettyimages
 

ある研究員はパワハラ被害に遭いながらベンチャーを設立したにもかかわらず、次年度の雇用を断られたという。

'20年6月には、センター3階の研究室で火災が起きた。山形県警は翌'21年3月に、火災の数日後に自死していた男性スタッフA氏を現住建造物等放火未遂の疑いで容疑者死亡のまま山形地検に書類送検した。本件で大学は公式な説明をしていないが、前出の関係者はパワハラの疑いを指摘する。

「自殺したAさんは多くの仕事を背負わされていた。火災が起きる半年ほど前から苦しんでいる姿を見ていました」

多くのスタッフがパワハラを受けていた実態を、被害者と山形大学職員組合が調査した。一方で、教授らによる国立研究開発法人などから獲得した研究費約3000万円の不正使用が明らかになった。不正への加担を拒否したスタッフもパワハラを受けていた。

山形大学は'22年3月にようやく不正使用を認めた。しかし、パワハラに関しては否定している。

調査に当たった教職員は「山形大学の執行部にはコンプライアンスの意識が欠如している」と憤る。これが天下り学長をいち早く受け入れ、予算の獲得に奔走した大学の実態なのだ。

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