前編『「徴用工問題の解決」に焦る韓国・尹政権、「日本へのたってのお願い」はやはり「謝罪」と「献金」か』より続く。
徴用工問題を巡る日韓協議が更に活発になってきた。両政府の思惑にはまだ「温度差」と言えるものが残っているが、とはいえ両政府としては「あうん」の呼吸を作り上げ、関係改善を進めたいという事情があることも事実のようだ。両政府が先月、今月と、わずか1ヵ月余りのうちに計3回も対面で協議を行ったことが何よりの証左だと思われる。
アメリカの思惑
では、徴用工と輸出管理措置の問題が解決して最も喜ぶ国はどこだろうか。米国だ。米国はこの間、日米韓の次官や外相、首脳会議などを繰り返しあっせんしてきた。バイデン米大統領は昨年11月、カンボジア・プノンペンで開かれた日米韓首脳会談の際、3ヵ国協力について「連携がこれまで以上に重要だ」と強調した。

このプノンペンでの日米韓首脳会談では、「インド太平洋における三ヵ国パートナーシップに関するプノンペン声明」が発表された。中国を名指しで非難こそしなかったものの、「日米韓三ヵ国は抑止力強化のために協働する」という文言が盛り込まれた。「北朝鮮のミサイル警戒データをリアルタイムで共有する意図を有する」ともした。韓国政府の元高官は「日米韓首脳の包括的な共同声明は初めてではないか。米国がそこまで力を入れているのかと驚いた」と語る。
この共同声明は、米国の戦略を暗示している。それは「日米韓の一体化」だ。米国は最近、日本や韓国などの同盟国に対し、盛んに「統合抑止(Integrated Deterrence)」を強調している。日米韓が一体となることで、中国やロシア、北朝鮮に対する抑止力を最大限にまで高めようとしている。もちろん、米国がそのなかで最大の脅威として位置づけているのが中国だ。