【独自】文科大臣を務めていた萩生田光一氏に「教育論」をガチンコで聞いたら、驚きの回答だった《シリーズ・ニッポンの教育》
ニッポンの教育ときに入試シーズンである。文部科学大臣時代、大学入試制度を大胆に改革しようと試みた萩生田光一氏。2021年度から、従来の大学入試センター試験に替わって大学入学共通テストが導入された。ただし2025年スタートを目指していた記述式問題、民間の英語試験導入は断念に追いこまれている。
文部科学大臣時代、抵抗勢力とどう戦いながら教育改革の指揮を執ったのか。田原総一朗がトコトン斬りこむ。

衆議院議員/自民党政務調査会長
萩生田 光一
KOICHI HAGIUDA
1963年、東京都八王子市生まれ。明治大学商学部卒業。八王子市議会議員(1991年4月〜)、東京都議会議員(2001年6月〜)を経て、2003年11月に衆議院議員に初当選(現在6選)。文部科学大臣政務官、自民党総裁特別補佐、内閣官房副長官、文部科学大臣、教育再生担当大臣、経済産業大臣、産業競争力担当大臣、ロシア経済分野協力担当大臣、原子力経済被害担当大臣、内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)を歴任。2022年8月より自民党政務調査会長。
創造力を育めないマルバツ教育
田原総一朗 今日は教育について、文部科学大臣を経験された萩生田さんにトコトン訊きたい。
萩生田光一 田原さんと教育の話をするとは思いませんでした。
田原 教育は、日本の将来にとって一番大事な問題です。小学校でも中学校でも高校でも、日本は試験で正解を求める教育ばかりをやってきました。正解を答えないとバツをつけられてしまう教育では、創造力なんて育てられるわけがありません。
2010年、NHKで「ハーバード白熱教室」という番組が放送されて話題になりました。マイケル・サンデル教授(ハーバード大学の人気講師)が、正解のない問題を出して学生にガンガン意見を言わせる授業です。
「暴走したトロッコの進路に2通りの道がある。片方には作業員が1人、もう片方には5人の作業員がいる。あなたが運転士だったらどちらの進路を選びますか」。こんな問題に正解なんてありません。
萩生田 何が起きるかわからない混迷の時代に世界が突入する中、子どもたちは正解のない課題を解決する力を身につけていかなければいけません。
算数のテストで「田原君の家から駅まで歩いて10分かかります。明日大事なイベントがあるので、8時の電車に乗らなければいけません。田原君は何時に家を出たら間に合いますか」という問題が出たら、正解は「7時50分より前に家を出ればいい」ですよね。
では「前日から駅に泊まる」という答えを書いた小学生はバッテンなのか。算数のテストではバツかもしれませんが、課題解決力としては花マルをつけるべきです。
田原 ギリギリに家を出て、途中で何か起きたら大変ですからね。
萩生田 「前の日から駅に泊まればいい」という答えが返ってきたら大人はギョッとするかもしれませんけど、これからの日本にとってはこういう発想力が大事だと私は思います。
田原 日本の教育の問題は、標準化を重要視してきました。標準化から外れた子は全部バツをつけられてきたわけです。
萩生田 学校現場では平等をすごく大事にしてきましたからね。これからの時代は、尖った発想をもつ子や、角度を変えて物事を考えられる子を育てていく必要があります。先生方もそこをよく認識していまして、最近は授業のやり方がだんだん変わってきました。ですから私は日本の学校の公教育にそれほど悲観していません。