新書大賞受賞! ‟きちんと化”する世界になぜ現代思想が必要なのか

人生の多様性はこうして守る
千葉雅也さんの『現代思想入門』が、祝「新書大賞2023」大賞受賞!! なぜ、今、現代思想なのか? なぜ、この、入門書なのか? その答えがここにある!
新書大賞第1位&13万部突破新帯

今なぜ現代思想を学ぶのか

この本は現代思想に入門する本です。

ここで言う「現代思想」とは、1960年代から90年代を中心に、主にフランスで展開された「ポスト構造主義」の哲学を指しています。フランスを中心としたものなのですが、日本ではしばしば、それが「現代思想」と呼ばれてきました。

本書では、その代表者として3人を挙げたいと思います。

ジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ、ミシェル・フーコーです。

他にジャック・ラカンやカンタン・メイヤスーなどにも触れることになりますが、この本ではとにかくデリダ、ドゥルーズ、フーコーという三つ巴をざっくり押さえます。この三人で現代思想のイメージがつかめる! それが本書の方針です。

では、今なぜ現代思想を学ぶのか。

どんなメリットがあるのか?

現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで考えられるようになります。単純化できない現実の難しさを、以前より「高い解像度」で捉えられるようになるでしょう。

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──と言うと、「いや、複雑なことを単純化できるのが知性なんじゃないのか?」とツッコミが入るかもしれません。ですが、それに対しては、「世の中には、単純化したら台無しになってしまうリアリティがあり、それを尊重する必要がある」という価値観あるいは倫理を、まず提示しておきたいと思います。

そう聞いて、「ふむふむ、そうだよな」と思ってくださるならいいのですが、「なんじゃそれは」とイラつく人もいるかもしれない。ともかく読み進めてみて、役に立つものかどうかご判断いただければ幸いです。

もう少し、この冒頭で、今なぜ現代思想なのかを説明させてください。