全国の家屋の13.6%を占める(平成30年住宅・土地統計調査結果より)と言われる空き家の問題。自分は無関係だと思っていても、親からの相続で急に当事者になりかねない。【前編】『空き家相続問題58歳男性が絶句…「空き家」になった実家に住み着いていた「驚きの生き物」』に引き続き、田中明夫さん(58歳・仮名、以下同)と姉の信子さんのケースを紹介しよう。
不幸が重なる
実家で害獣騒ぎがあって以降、実家に通う回数をひと月に1回に増やした明夫さんだったが、それから数ヶ月後、新たな事件が起こる。実家に帰ると窓が割れていて、家の中がメチャクチャに荒らされていたのである。
警察に連絡して現場確認をしたところ、窓から空き巣に入られたらしい。空き巣は約7割が窓からの侵入で、プロならドライバーひとつで大きな音を立てることもなく、30秒程度で割ることができるという。
ちなみに実家の窓は、網入りガラスだったが、防犯ガラスではなかった。防犯意識が薄く迂闊だったとも言えるが、空き家になった実家の窓ガラスをわざわざ高価な防犯ガラスに取り替えることは普通しないだろう。
「既に現金や通帳や証券などは持ち出していたので、金目のものはありませんでした。残っていたものと言えば、家族の写真や親の使っていた古時計、あとは作者のわからない絵画が数点程度でしょうか。経済的な被害は大きくなかったのは不幸中の幸いでした。
ただ、何もないことに空き巣がイラついたのでしょうか、破かれた写真が床に散乱しているのを見た時は本当に悲しくなりました。多少お金になりそうな時計と絵も盗まれていましたが、警察に被害額を聞かれても、正確な金額もわかりません。仕方なく『微々たるものです』とだけ申告しました」

明夫さんも、まさか空き家に空き巣が入るとは思わなかっただろう。それ自体は仕方ないと言え、自分がのんびりと片付けていたことが、結果的に親との思い出の写真を破損する結果を招いてしまったことに、罪の意識を感じないわけにはいかない。
「今更ですが、私がもっと強く処分しようと姉を説得できれば良かったと思うと残念でなりません。反対されたとは言え、自分も今後の地価高騰に期待をしてしまったのが、結果的に今回の事件を招いたわけですからね」