2023.02.14

日銀新総裁・植田和男氏の起用の裏にあった岸田派と安倍派の思惑… 植田氏が避けることができない摩擦

経済学者としてピカピカの経歴

報道によると、岸田総理は今日(2月14日)、国会に、日銀の次期総裁候補として、元東京大学教授の植田和男氏の名前を提示する。国会の同意が得られ次第、内閣が植田氏を4月8日に任期の切れる黒田東彦・日銀総裁の後任に任命し、同9日付で就任する運びという。

欧米では、米連邦準備理事会(FRB)議長を経て財務長官をつとめるイエレン氏や、バーナンキ元FRB議長、欧州中央銀行(ECB)元総裁のドラギ氏などの例があり、経済学者出身の中央銀行総裁は決して少なくない。これに対し、日本では戦前・戦後を通じて、植田氏のような純粋の経済学者が日銀総裁に起用されるのは初めてだ。

その植田氏の新総裁としての最大の使命は、歴代最長の任期を誇った黒田氏がほぼ10年にわたって行った大規模緩和の軋みを一定の時間をかけて市場にショックを与えずに改善したうえで、最終的に金融政策を正常化するというものになるだろう。この観点から見ると、国際的に知られた経済学者であり、高い説明能力を誇る植田氏は、考え得る候補者の中で最適の人物の1人と言える。

とはいえ、植田氏の直面する金融政策の正常化の過程は「利上げ」を伴うものにならざるを得ない側面があり、遠からず、洋の東西を問わず「利上げ」を嫌う政治家たちとの軋轢を避けるのが困難になりそうだ。加えて、リーダーシップに乏しい岸田総理の後押しでの日銀総裁就任となるだけに、植田氏は政治との対話で苦労の絶えない総裁人生を送るリスクを抱えている。

まずは植田氏のプロフィールを見ておこう。同氏は現在、共立女子大学のビジネス学部の学部長をつとめている。学歴としては、東京大学の理学部、経済学部を卒業しており、在学中は宇沢弘文氏や小宮隆太郎氏といった日本の経済学史上に名を連ねる学者に師事した。その後、マサチューセッツ工科大学でPh.D.を取得したという経済学者としてピカピカの経歴を持つ。

共立女子大学のHPより

その一方で、植田氏は「象牙の塔」にこもりきりだったというワケではなく、政府・日銀とも積極的に関わってきた。旧大蔵省の財政金融研究所の主任研究官をつとめた後、1998年から2005年まで日本銀行の政策委員会審議委員に従事した。当時の速水優総裁が推進したゼロ金利政策や量的金融緩和政策の導入を政策委員会の理論的支柱として支えた実績がある。

 

特に、2000年の金融政策決定会合において、ゼロ金利政策の解除に反対票を投じたことは有名だ。速水日銀はわずか半年後にゼロ金利政策に逆戻りしており、時期尚早と視た植田氏の判断の正しさを裏付けた格好となっている。

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