高額な遺産をもらっている人は少ない
国税庁の令和2年分「相続税の申告事績の概要」によると、亡くなった方のうち、課税されるほど高額な財産を遺して亡くなったのは全体の8.8%となっています。相続税というのは、おおむね3000万~4000万円を超える遺産を相続する場合にかかる税金です。つまり、9%にも満たないくらい少数の人しか、大きな金額の遺産を相続することができていないといえます。
しかし、相続税がかかるほどの金額の遺産を相続できた人も、注意が必要です。(親の)遺産が十分にあることにあぐらをかいて、貯金を怠ってしまったり、散財してしまったりするケースは度々耳にします。

今回は、母親が大金を相続してお金の心配がなくなったのに人生設計が狂ってしまった女性の事例をお伝えします。その女性は、父親が遺した財産を相続した母親から、いずれ自分がほぼ全額受け継ぐだろうと安心していました。しかし、ある年実家に帰ったとき、母親がその遺産をすごいペースで浪費しているのを目の当たりにすることになるのです。ぜひ最後まで読んで、一つの教訓にしていただければ幸いです。
(個人の特定を防ぐため、内容は一部変更しています)
経済的不安と孤独の不安
中川舞さん〔仮名、以下同〕は、東京の中小企業で営業として働く年収400万円の独身女性です。
田舎にある実家を離れ、彼女は一人東京に出てきましたが、40歳を超えた頃から少しずつ一人暮らしに孤独を感じるようになったといいます。仕事は彼女なりにがんばってきたものの、上京当初思い描いていたようには出世できず、貯金も300万円程度しかなく、将来の経済的な不安も強まってきていたそうです。