その子の得意なものを伸ばして、生き生きとさせたい。それは多くの保護者達が思うことだろう。中学受験も、「この子の能力を伸ばせたら」と思って子どもの背中を押す人が多いはずだ。それでも、受験を支えるにはどうしたらいいのだろうか。
なかのかおりさんがSNSで広がっている「#中学受験のバトン」活動をしている方々に取材する第4回は、ワンオペで3児を育てているM子さんにお話を伺っている。中学受験のためというよりも、算数がとにかく大好きだという長男が楽しく学べる場所を探していたというM子さん。前編「算数偏差値65、国語は35…ワンオペ家庭の「算数男子」が開成受験を目指すまで」では、そこから早稲田アカデミーの「NN開成」コースで一緒に学ぶ友人と出会い、開成を目指すことになったことまでをお伝えした。
後編では6年生になってからのことを詳しくお伝えしていく。
送迎時のコミュニケーション
6年生になり、「算数男子」だったM子さんの長男は、ラップで社会の暗記をするなど工夫して開成を目指した。同じ塾の友達、そしてM子さんが長男を支えた。
「自習室では、K君と一緒に勉強していました。塾の先生が、2人だけに教えてくれたことも。先生が捕まらなくても、2人で特訓をしました。息子は算数が得意で、K君は国語が得意だったので、毎日競い合って、とても良い関係でした。K君がいなかったら、そんなに勉強していなかったと思います。
私は本人と塾に任せていましたが、送迎する時にどういうことをしてきたの?と聞いていました。3人の子育て、仕事、自分の病気、ワンオペ、父の死など大変なことが多かった時期に塾に入り、息子ももうちょっと自分のほうを見て、という気持ちもあったと思います。彼なりに、あちこち大変なのはわかってくれていました。
お母さんは過去問のコピーとか送り迎えとか、最低限のことはやるよ、と話しました。何をどこまでやればいいかまでは、分かりませんでした。他の親がテスト前に綿密にサポートしているとTwitterで見て、驚きで。私はテスト範囲さえ、知らないこともありました」

男子は特に、テスト前にゲームをやめられなくてバトルになるとか、勉強しなくてイライラするとか、受験生の親の嘆きをよく聞く。
「それはなかったです。息子は、スマホのゲームを少しやるぐらいでした。むしろ、たまにやるなら私と一緒にゲームやろうぜ!と誘っても、本人はドン引きして、『そういうことを、受験生の親は言わないよ』と冷静でした」