にしおかすみこさんは、週刊文春の連載「阿川佐和子のこの人に会いたい」に出演し、SM女王様時代のエピソードとしてこのように語っていた。
「母は娘に結婚してほしい人だったので、結婚結婚ってうるさくて、それであんまり実家に帰らなかったんです」(「週刊文春」2月23日号より)
そうして2020年、久々に帰った実家で見た光景が、ゴミ屋敷であり、見たことのない母の姿だったわけだ。それから同居を決め、家族との生活を綴っている『ポンコツ一家』は、連載13回に加筆修正の上、書き下ろし5編を加えて1冊の書籍となったが、継続している生活をこうして連載でも綴っている。
18回の連載前編では、にしおかさんは認知症の母親からこのように言われたことをお伝えした。
「人形だって相手がいるよ。あんた結婚できないねえ。ずっと独身?一生かい?天涯孤独?孤独死かい?ママが死んだらどうするんだい?」
果たしてにしおかさんはどう答えたのか。そしてそこから珍道中が……。

もう、うるさい!
「…楽になるだろうが、もう、うるさい! なんで朝から階段の途中で結婚、結婚言われなけゃいけない? ママは初めて言ってるつもりかも知れないけど、ここ最近、これ何週間も繰り返してんだよ! 同じことばっかり! 結婚した人が幸せ?独身は不幸せ?誰が決めた? そもそもそこまで結婚に興味がないんだよ。外で結婚したいんですぶるのもいい加減しんどいんだよ。自分の働いた金で、自分の好きなこと出来たらそれでよくない? 孤独死の何がダメ?」
階段に詰まっていた粘土が、背筋をピンと伸ばしスタスタと足早に退散していく。下りられるじゃないか、バカヤロー。
母を無駄に傷つけ、八つ当たりしてしまったじゃないか…バカヤロー。
自分のご機嫌をとれないまま、朝ご飯と今日分の作り置きの準備に取り掛かる。
母が何か言いたげに私の後ろをウロウロし始める。またあたってしまいそうなので、知らん顔を決め込む。
