H3「失敗ではない」と言ったところで
またしても日本の科学技術「神話」が揺らいでいる。2月17日に予定されていたH3ロケットの打ち上げができなかったのだ。主エンジンには着火したが、続いて着火するはずの固体ロケットブースターが作動しなかった。システムが異常を検知して着火信号を送らなかったためという。

新聞の中には「打ち上げ失敗」と見出しを立てたところがあったが、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の担当者は「失敗ではない」と言う。専門家からすると、異常を検知し設計通りに停止したのだから、「失敗」ではなく「中止」だということらしい。
「失敗」と配信した共同通信の記者がネット上で炎上し、「失敗は成功のもと」と発言した永岡桂子文部科学相も釈明に追われた。担当者からすれば「失敗」と書かれるのは沽券に関わるということか。また、「失敗」という言葉に反応したネット民も「日本は失敗するはずがない」という思い入れがあるのか。背後には日本の科学技術は世界に冠たる水準だという「神話」があるように思う。
だが、現実は、H3ロケットの開発も苦難の連続と言っていい。H3はJAXAが三菱重工業と開発中の次期基幹ロケットで、設計・開発段階から民間企業である三菱重工が主体的役割を果たしてきた。運用後には商業利用のための打ち上げを「受注」することを狙っている。いわば新発想の開発ロケットだ。
当初は2020年度に初号機の打ち上げを目指したが、問題が見つかって2020年9月になって延期を決定。2021年度中の打ち上げへと時期が変更された。ところが2022年1月になって再度延期。ようやく今回の打ち上げにたどり着いていた。ところが残念ながら今回も「中止」ということで飛ばずじまいだった。それでもJAXAは「2022年度中の発射を目指す」との姿勢を変えていない。