「池田小児童殺傷事件」から22年…愛娘を亡くした母がいま「憎しみからは何も生まれない」と語る理由
池田小学校事件から22年。胸に湧きあがる思い
日本全国を震撼させた衝撃的な事件が起こってから22年近くが経った。
2001年6月8日、大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校で発生した児童連続殺傷事件。刃物を持った男によって1年生と2年生の児童8人が命を奪われ、15人が重軽傷を負ったこの未曾有の凶悪犯罪を強烈なショックと共に記憶している人は、筆者も含めて多いはずである。
事件によって、深く、長く傷つき苦しんだのが、被害者となった児童たちの家族であることは言うまでもない。先日、新著『かなしみとともに生きる〜悲しみのグラデーション』を刊行した本郷由美子さんもその1人だ。

本郷さんは、当時2年生だった長女の優希(ゆき)さんを亡くして悲嘆の底に沈み、一時は自らも命を絶つことも考えたという。しかし、いくつかの出来事をきっかけに心が少しずつ再生していき、やがて「グリーフケア」と出会って、人のかなしみに寄り添って生きることを決意する。本書は、その22年間のさまざまな思いと軌跡を語った1冊である。
もちろん、本郷さんの中で今なお苦悩や葛藤があることは想像に難くない。それも含めて自他の心と丁寧に向き合い、憎しみから離れて、人々のいのちを守りつないでいきたいという渾身のメッセージは深く胸を打つ。
最愛の存在を失い、生きる力を奪われるほど絶望の淵に突き落とされながら、どのような経緯で、人のこころを支えることに人生を捧げるようと考えたのか。自分にとってかけがえのない、それなのに会えなくなった人たちと繋がり、対話する時間はどうすれば見つけられるのか……。
読後、胸の中にそんな思いが湧き上がるのを感じつつ、本郷さんを訪ねてお話を伺った。