2010.08.29
ヤクルト由規 日本球界最速「162㎞/hは自分にしか投げられない」
"号泣王子" "マメ規"と呼ばれた男が、日本人最速158㎞/hを連発して勝ち星量産

「他の選手に聞いて回ったんですが、みんな僕よりも浅く握っていて、マメができるにしても指先にできるらしいんです。野球を始めた頃からずっと正しいと思ってやっていたことが、明らかにおかしかったんだと気付かされた」
すぐに握り方を変えてみたものの、当たり前のように行っていたキャッチボールすら満足にできなくなった。
「それまで深く握っていた分、ちゃんとボールを握れていないような気がして腕が振れないし、ボールが指先から離れてくれないような感覚だった。ようやく慣れてきた頃、いつもキャッチボールの相手をしてくださる村中(恭平・投手)さんに『回転数が増した』と言われたんです。そこからすべてが好転していったような気がします」
ボールのリリース時の力加減も昨シーズンから変化した。親交のある一歳上の広島の前田健太にストレートの投げ方について相談すると、「ボールは軽く握ってリリース時にだけ力を入れたほうがいい」とアドバイスされたのだ。ダーツを投げる時のような感覚でストレートを投げ込んでみる。

するとキレが増しただけではなく昨年あれほど苦しんだマメが一切できなくなった。インタビュー時、空調が効いた部屋でも汗ばんでしまう指先を見せてもらったが傷跡もまったく無くて、すべすべした皮膚をしていた。
「ようやく今、新しいボールの握り方がしっくりくるようになった。完投できるまで、こんなに時間がかかるとは思ってもいませんでしたけどね」
号泣王子から剛球王子へ
由規の投球内容が見違えるように良くなった理由は、テクニカルな面の成長だけでなく、精神面の成長にもある。