「虫の知らせ」で金庫を開けたら
友幸さんは志穂美さんを呼び出し、話し合いの場を持った。動かぬ証拠を突きつけられたことで覚悟を決めたのか、志穂美さんは特に弁解も抵抗もせず、その場で友幸さんが差し出した離婚届けに無言でサインをし、ハンコを押した。
「『悪いけど、今すぐに出て行ってくれ』と言うと志穂美は『わかりました』と言って、自室に入っていき、ものの5分もしないうちにスーツケースを持って戻って来たかと思ったら、『お世話になりました』と頭を下げ、出て行きました」
まるであらかじめ用意してあったかのような手際の良さだった。
「あんまりあっさり出て行ったので、なんだか拍子抜けでした」
友幸さんに、どっと疲れが襲ってきた。早々とベッドに入るも、なかなか寝付けない。
「虫の知らせと言うんでしょうか。夜中に急に金庫の中が気になったんで、開けてみたんです」