小児科の医師の成田奈緒子さんは、神戸大学医学部の同級生だという山中伸弥教授が最も信用する研究者のひとりだ。ふたりの共著『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』では、おふたりの「育ってきた環境」も明らかにしながら、「レジリエンス=乗り越える力」が現代にとても大切であることも訴えていた。

神戸大学医学部の同級生だった山中伸弥教授と成田奈緒子さん 写真提供/成田奈緒子

そんな成田さんの最新刊『高学歴親という病』は、「レジリエンス」を育てるために、時に障壁となってしまうこともある「親の病」について綴った書籍だ。成田さんは自身の「子育て科学アクシス」にて、発達障害(自閉症スペクトラム)、ダウン症、不登校、そして「学校・園でうまくいかない子」などに悩む方々の相談にも応じてきている。本書はそういう実例も含め、特に高学歴の親が「子どものため」にと起こす行動が与える深刻な影響を伝えているのだ。本書より何回かにわたり抜粋掲載する第5回は、特に高学歴の親が陥りやすい「過干渉」についてお届けする。

前編では、実例を踏まえ、高学歴偏重親が子どもにとって良かれと「やりすぎる」ことによって起きることをお伝えする。

大学の願書や履修登録まで親?

大学受験をする際に提出する入学願書をすべて母親が書いているという人の話を聞きました。就活の際に企業に送るエントリーシートを、子どもの代わりに書く親もたくさんいます。なぜ断言できるかというと、私の勤めている大学で経験しているからです。たとえば、大学の履修登録を子どもに代わって全部やってしまう親がいます。ほかにも、
「うちの子の精神保健福祉士の試験の願書をこちらで書いてあげました。ちゃんと封をして持たせたのですが、本当にポストに投函したかどうか見てやってください」
などと電話をかけてくる親もいました。

最近は出願もオンラインがメインだ Photo by iStock

このように過干渉、過保護な親は、子どもの自立を阻みます。その結果、子どもは親の管理、コントロールができないところで他人に迷惑をかけたり、問題を起こしたりするのです。

たとえば、こんな親子がいました。フルタイムで銀行員として働くマスミさんは、小学3年生の息子が持ち帰る宿題が気になって仕方がありません。