「私は本当に娘の体さえ良くなってくれればいいんです。学校に行かなくてもいい。学校を辞めさせてもいいと思っています」

小児精神科医で脳科学者の成田奈緒子さんのところに相談にきたメグミさんは、偏差値65以上の中高一貫校に入学した12歳の娘の不登校に悩んでいたという。そうして「普通であればいいんですが」とも……。
しかしその「普通」とはどのようなことを指すのだろうか。

成田奈緒子さんの著書『高学歴親という病』は、子どもに良かれと思ってすることが、実は子どものレジリエンス(困難に向き合う力)を育てる邪魔になってしまうような恐怖を、実例と科学的エビデンスと共に伝える一冊だ。

そこから抜粋紹介する5回目のテーマは「過干渉」。
前編「大学受験の願書をすべて親が…高学歴親の過干渉と過保護の「末路」」では大学入試願書までやってしまう親の影響に加え、相談にきた高学歴のメグミさんの実例をご紹介した。メグミさんはどうしても「学校に行かなくてもいい、でも英語だけは…」などと、「本音が違う」ことが透けて見えてしまうのだ。

後編ではメグミさんのその後と、ときにモンスターペアレンツになりかねない高学歴親の「溺愛」について詳しくお伝えする。

 

「公立でもいいんですけどね」

メグミさんのように、子どもに中学受験をさせる方は高学歴親に多く見られます。その人たちの子どものなかには、せっかく入った中高一貫校で不適応を起こすケースが少なくありません。不登校になったり、遅刻や欠席が多くなると、学校の先生からも「ちょっとこのままだと……。本校とあまり合ってないのではないでしょうか?」と言われます。学校に行けない理由は、友達と上手くいかない、勉強についていけない、学校と合わないなどさまざまです。

「公立中学(高校)でもいいと思ってたんですけど、たまたま受かったんで通わせています」と話すので、私が「それなら地元の公立中学校に通わせてみては?」「地元に公立高校もありますよね」とアドバイスすると、親御さんたちは口を揃えて言います。

「どこの学校でもいいんですけどね」

それなのに、いざ具体的に転学の話になると強く抵抗します。

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「せっかく中高一貫の学校に入れたんですから、せめて高校受験は経験させたくないんですよね」と、公立の高校に通わせることを暗に嫌がるのです。実は何とか通い続けてほしい。合格した学校にしがみつきたい本音が伝わります。