昭和初期の満州を舞台に、アヘンの密売を描いたクライムサスペンス『満州アヘンスクワッド』(原作/門馬司、漫画/鹿子)。1931年9月18日の満州事変を契機に現在の中国東北部に成立した満州国は、アヘンで栄えアヘンとともに滅びたと言えるだろう。
そんな約100年前の満州の「裏社会」では、いったい何が起こっていたのか……? 前編記事『実は禁断の麻薬「アヘン」の産地だった…100年前の中国の「ヤバすぎる現実」』に引き続き、『昔々アヘンでできたクレイジィな国がありました』よりアヘンをめぐる当時の満州の事情を紹介しよう。
恐ろしすぎる秘密結社の実態
満映の社長から新京の寂れた中華料理屋の中に青幇(チンパン)のアジトがあること、別の人物からは、店主に特定の注文をすることで仲間だと認められると教えてもらったうえで、日方勇は李姚莉(リーヤオリー)救出のためアジトに乗り込みます。作中にもあるように、青幇は中国最大の秘密結社で、「切口(チェクゥ)」と言って、メンバーだけが知る隠語や暗号を定めていました。
青幇は黄河と長江を結ぶ大運河で水運を営む労働者の互助組織に始まります。隋の時代に完成した大運河は中国南北間の物資輸送を支える大動脈で、明・清の時代には南部の穀倉地帯で収穫された米を最大の消費地である北京へ運ぶのが最大の仕事でしたが、国家の専売商品である塩の密売に携わる者も少なくありませんでした。
往路は米を満載、帰りは何を積んでもよく、それを売った代金は各人の収入にできたので、重労働ではありますが、大運河の水夫は悪くない商売でした。