「ウクライナの次は台湾」は本当か
廣瀬: 「台湾有事」が昨今、かまびすしいではないですか。「ウクライナの次は台湾」ではないかと、日本も含めた西側諸国は警戒を強めていますよ。
近藤: 「台湾有事」が本当にあるのだとしたら、それはトップが率先して先陣を切る「ウクライナ戦争型」にはならないと思います。第二次世界大戦で言うなら、アドルフ・ヒトラー総統が先陣を切った「ドイツ型」ではなく、昭和天皇が軍部に引きずられていった「日本型」。つまり、本当は戦争をしたくない習近平主席が、強硬な人民解放軍に引きずられていくパターンです。
廣瀬: それはそれで、恐い気がしますが……。

近藤: そうですね。ただそれでも、習近平主席の言動をこの10年見てきた立場から言うと、十分に「予測可能なリーダー」です。習主席は「建国の父」毛沢東主席を崇拝していて、「21世紀の毛沢東」になろうとしている。
その点、プーチン大統領は、「予測可能なリーダー」なのでしょうか? 私は一年前に、まさか本当にロシアが、ウクライナに侵攻するとは思いませんでした。
廣瀬: プーチン大統領の「論理」を理解すれば、ある程度、予測可能なのではないかと思います。
プーチン大統領は愛国心が強く、いまのロシアを、ピョートル大帝やエカテリーナ二世時代のロシア帝国のように復活させていきたいと考えています。そのため、ウクライナ侵攻もプーチン大統領にとっては、「侵攻」ではなくて「奪還」であり「復興」なのです。
こうした主張は、たびたび演説で述べています。ただ、プーチンの主張は理解はできますが、共感は一切できないですし、そもそもこういう理由で他国に侵攻すること自体が荒唐無稽ですから、やはり予測は難しいのが現実だったりしますが・・・。
近藤: 習近平主席も、政権のスローガンを「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」と定めていて、キーワードは同じく「復興」です。
ユーラシア大陸の「2大国」のリーダーは、やはり発想が似ていますね。習主席はこの10年で、何百人という世界のリーダーと会談しましたが、本当に理解し合えると感じているのは、おそらくプーチン大統領ただ一人と思います。
廣瀬: プーチン大統領も、ウクライナに侵攻するにあたって、中国を味方につけておく必要性を痛感していました。それで侵攻直前の昨年2月4日に、わざわざ北京を訪問したわけです。
近藤: あの時、北京の釣魚台国賓館でプーチン大統領を出迎えた習主席の第一声は、「男の約束を守ってくれて、本当に嬉しい」でした。前述の2014年のソチ冬季オリンピック開会式に参加した際、習主席は自分も将来、北京で冬季オリンピックを開催したいと考え、プーチン大統領に熱い思いを吐露したんですね。
そうしたらプーチン大統領は、「北京での開催を応援するし、実現したら必ず開会式に出席する」と答えた。根っからの「北京っ子」である習主席は、これを「男同士の約束」と捉え、プーチン大統領が約束を守ってくれたことに感激したわけです。