2023.03.12
# 趣味 # 芸術

高級時計は「針」こそが命…実は「これだけの種類」があるんです

機械式時計のすべて

より正確で安価なクォーツ式が普及したにもかかわらず、高価な機械式腕時計の虜になる人が後を立たないのはなぜなのか。

コロナの渦中も、むしろ売上を伸ばした高級時計人気の秘密と、その本当の価値、選び方、買い方や心得について、時計マニアの評論家・山田五郎さんが、独特の視点で鮮やかに解説します。

名画をおもしろわかりやすく解説したYouTubeチャンネル『山田五郎 オトナの教養講座』も、あっと言う間にフォロワー48万人超え。評論・解説の確かさに定評のある評論家・山田五郎さんは、じつはAHS(イギリス古時計協会)、GPHG(ジュネーヴ時計グランプリ)アカデミー会員であるほど時計の知見も非常に高いのです。

そんな五郎さんが、小学生時代以来、愛してやまない時計人生の集大成をまとめたのが、『機械式時計大全』(講談社選書メチエ)。この記事は、その本から「意外と見落としがちな、時計指針の種類と見方」について抜粋、構成したものです。

「針」が文字盤に描く眉

どんな高級時計でもアナログ表示なら、時計業界で単に「針」や「腕」と呼ぶ指針がなければ意味をなしません。細く小さなパーツながら文字盤全体の印象に大きく影響する針は、人の顔で喩(たと)えれば眉にあたるでしょうか。  

機械式時計700年の歴史の中で作られてきた針のバリエーションは数え切れないほどあります。ここでは現在の腕時計に比較的よく見られる14タイプについてのみ、簡単に解説しておきましょう。

 

「ドーフィン」はイルカではなく王太子妃

1「ブレゲ針」

天才時計師A = L・ブレゲはここでも自らの名を残しています。今では他社の腕時計にも使われますが、正しいブレゲ針は鋼を焼き入れして青光りさせた「ブルースチール」で作られ、先端の丸い部分に開けた穴が針先側に偏心してきれいな三日月型を残すのが特徴。ぜひ本家本元をお店で確認してみてください。

2「ドーフィン」

パテック フィリップ「カラトラバ」やセイコー「グランドセイコー」でおなじみのこのタイプは、我が国ではしばしば「ドルフィン」と呼ばれ、イルカに形が似ているからだと説明されます。

けれどもスペルは英語圏でも dauphine と表記され、これはフランス語の dauphin(ドーファン) の女性形。 dauphinはイルカの他にフランス王太子を意味し(理由は Wikipedia 等をご参照ください)ますが、女性形は王太子妃とそこから派生した意味しかありません。

したがって、やはり王太子妃にちなむ命名と考えて「ドーフィーヌ」、あるいは英語読みで「ドーフィン」と呼ぶのが正しいでしょう。

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