昭和初期の満州を舞台に、アヘンの密売を描いたクライムサスペンス『満州アヘンスクワッド』(原作/門馬司、漫画/鹿子)。1931年9月18日の満州事変を契機に現在の中国東北部に成立した満州国は、アヘンで栄えアヘンとともに滅びたと言えるだろう。
そんな約100年前の満州の「裏社会」では、いったい何が起こっていたのか……? 『昔々アヘンでできたクレイジィな国がありました』より、当時の満州の社会事情を紹介しよう。
闇市場で「人間」はいくらか?
『満州アヘンスクワッド』にて、母親がペストに感染して虫の息となったとき、主人公・日方勇はサルファ剤を求めて奉天の薬局を訪れますが、200圓という金額を聞いて絶句します。
「そんな大金とても……」
そう言う勇に対し、薬局の店主は笑みをたたえながら、さらに驚くべきことを口にしました。
「目玉は眼病、胃袋は臓器系、脳みその蒸し焼きは万病に効く」
回は進んで、哈爾濱の大観園では、臓器目当てで子どもが殺される現実が描かれていますが、これらはすべて現実に起こり得た話です。
誘拐ビジネスは1930年代を通して盛んで、人質は「肉票(ロウピャオ)」と呼ばれました。肉票ひとり当たりの相場は5〜10元。指定期日までに身代金が支払われなければ、その20倍くらいの金額でよそへ転売されます。