2023.03.19
# 裏社会

かつて日本がやっていた「異常なビジネス」…満州の「黒いカネ」はどこへ消えたのか

アヘンの専売で莫大な利益が…

昭和初期の満州を舞台に、アヘンの密売を描いたクライムサスペンス『満州アヘンスクワッド』(原作/門馬司、漫画/鹿子)。1931年9月18日の満州事変を契機に現在の中国東北部に成立した満州国は、アヘンで栄えアヘンとともに滅びたと言えるだろう。

そんな約100年前の満州の「裏社会」では、いったい何が起こっていたのか……? 『昔々アヘンでできたクレイジィな国がありました』より、当時の満州の経済事情を紹介しよう。

100種類の紙幣が出回っていた

満州には、発券銀行=紙幣の発行権を持つ金融機関が複数存在しました。現在でも、たとえばイギリスではイングランド銀行のほかにスコットランドと北アイルランドの各3行、合計7つの金融機関にそれが認められています。もっとも、国外でも両替可能な紙幣を発行できるのは、イングランド銀行だけです。

かつての満州はもっと凄い状況にありました。満州国建国の前夜には、「紙種15、券種136」といいますから、発行元の異なる紙幣が15種、同じく銀行券が136種も流通していたのです。

銀行以外の発行者の信用をもとにする紙幣が金銀とは交換できないのに対し、銀行券は金銀との交換が保証されている兌換券でした。それ以外に貨幣や金銀の塊も使えましたが、偽造・贋造モノが多く出回っていました。銀の塊は鋳造、切断、溶解などが自由化されていたこともあって、いちいち純度や重さを吟味して、その価値を割り出す必要がありました。

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なぜこんな状況になったかといえば、主な理由は以下の三つです。

その一は、清王朝末期から中華民国の北京政府時代を通じて、紙幣の発行に関する明確な法令が存在しなかったこと。

その二は、複数の軍閥が割拠していたこと。

その三は、大豆を輸出すればもうかると知られてから、高利貸が紙幣を乱発したこと。

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