はじめまして、強力な個性で「空室知らず」の物件“一芸物件”の専門家、井上敬仁と申します。大家歴19年の中で一芸物件に注目し、『高い家賃なのにいつも満室になる人気物件のつくり方 一芸物件』という本まで出版させていただきました。
そんな私が、今回「学生の町の食事付き物件」を2例ご紹介したいと思います。
いずれも不動産管理会社が運営するもので、食堂はそれぞれの会社の管理物件および自社の企画物件の入居者のためにつくられました。
運営の形やコンセプトは異なりますが、いずれも入居者の食生活を支える場として大切な役割を果たすとともに、賃貸物件にとっては大きな付加価値となり、なんと地域の賃貸相場にまで好影響を与えているといいます。
学生のほとんどが初めての一人暮らし。その中でももっとも困ったり、おざなりにしがちなのが1日3度の食事です。学生の物件探しは親の意見で決まることも多いものですが、その点でも、食堂付きという一芸は入居者を呼び込む大きな要素になっているようです。
1800室の物件の資産価値をいっぺんに上げる方法
●一芸物件紹介
有限会社 東郊住宅社( 神奈川県相模原市)[トーコーキッチン]

ここがスゴイ!
・朝100円、昼夕500円。圧倒的なコスパで入居者を応援。
・食堂が1800室の管理物件すべての付加価値に。
・賃貸稼働率99% 。いまや空室がないのが悩み。
基本の仕様
・2015年12月開業。東郊住宅社が管理する物件1800室の入居者専用の食堂。
・全24席。営業時間8時〜20時。年中無休(年末年始を除く)。
・朝食100円、昼食・夕食500円。食べにいくたびの都度払い。
・「おかあさんのおいしいごはん」がコンセプト。約100パターンのメニューを用意しており、昼食・夕食には週替わりセット2種類と日替わり定食を用意。その日のメニューはTwitter・Instagram・Facebookで告知。
https://www.fuchinobe-chintai.jp/toko_kitchen.html
https://www.fuchinobe-chintai.jp/
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東郊住宅社は約50年の実績をもつ不動産管理会社。神奈川県相模原市を本拠地に、質の高い仲介・管理のサービスを展開しています。
今回、ご紹介する[トーコーキッチン]は、青山学院大学・桜美林大学・麻布大学の通学圏内であるJR・横浜線の淵野辺駅から駅徒歩2分の立地で営業しています。
そして、この食堂が誕生した背景としては、学生の親御さんからの食事サービスへの需要が高まっていたことが大きかったといいます。
同時に同社では次の2つの理由から、管理会社としての新たな付加価値の創造を目指していました。
一つは、他社との差別化です。2004 年、同社は日本で先駆けて“敷金・礼金・退室時修繕費ゼロ”を導入し、それが多くのお客様に選ばれる理由となっていました。しかし、近年は他社も同じような仕組みを取り入れるようになったため、第二の柱の確立を急いでいました。
もう一つは、経年変化する賃貸物件の家賃を下げない、空室を出さないための方策です。オーナーは手をかけ、お金をかけ、物件の資産価値を維持する努力をしていますが、「管理報酬を受け取る立場として、管理会社にもできることがあるのではないか」ということを東郊住宅社では考えつづけていたそうです。
それも、部屋ごと、建物ごとではなく、管理している1800室の物件の資産価値をいっぺんに上げる方法はないものか、と……。