「次の火薬庫」モルドバ、最悪、核兵器級の爆発が起きるかも知れない

飛び火するウクライナ戦争・その2
【その1・「ウクライナの次」と噂のモルドバ、手を伸ばすロシアの不穏な動き】でみたように、ウクライナ同様、ロシア圏からEU・NATO圏へ接近を図るモルドバに対し、ロシア系住民を使った反政府運動などの揺さぶりをモスクワは仕掛けている。ロシアの真意はそれだけではない。ロシア系住民の集住地域・トランスニストリアの存在とそこにある核兵器級の弾薬備蓄量をもつ巨大兵器庫の帰趨。事態の展開によっては、兵器庫への攻撃すらあり得る状況だ。

ロシア人集住地域トランスニストリア

モルドバ情勢をさらに複雑にしているのは、ウクライナとの国境地帯に細長く横たわる「トランスニストリア」である。ここは発電所、製鉄所、繊維工場、コニャック工場などのある産業地帯で、住民約45万人の3分の1はロシア系(他に3分の1がモルドバ系、3分の1がウクライナ系)である。

by Gettyimages

そしてソ連時代からの大規模な武器庫がそのまま残り、1000名余りのロシア軍がこれを守る。1991年のソ連崩壊直後、ここではロシア軍が蜂起して準独立の地位を標榜するようになっている。

トランスニストリアの政界は、共和党と刷新党に二分され、「シェリフ財閥」が経済の大半を握る。独立を標榜しつつも、経済はモルドバ本体に大きく依存している。この地域の輸出の60%はEU向けなのだが、EUはこれをモルドバ本体経由でしか輸入しないようにしているからである。

 

またトランスニストリアは前期のロシアの天然ガス・パイプラインから得るガスで地元の発電所(と言ってもロシア電力公社InterRAOに所属)を稼働して発電。それをモルドバ本体に売却して資金を得ている。このガスは、モルドバが輸入したものとして、モルドバ本体政府に代金が請求される。

EUは、トランスニストリアをモルドバ本体に「復帰」させるべく、長年にわたって地道な調停を続けてきた。ロシアはこの話し合いの場には入っていない。しかし、トランスニストリアのロシア軍を維持することが年々困難となっていることもあり(ウクライナ及びモルドバ本体が装備・交代要員の領内通過を許さない)、譲歩を容認してきた。

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