FRaUwebでは、年に数回、子宮頸がんとHPVに関する記事を配信している。そして3月4日の国際HPV啓発デーや女性の健康にまつわる記念日に合わせて、漫画家の鈴ノ木ユウさんのご厚意で、1週間期間限定で、218ページにわたる「子宮頸がん」のエピソードを無料試し読みも掲載させていただいた。

2023年の国際HPV啓発デーに、再度漫画『コウノドリ』の試し読みとともにその記事に寄せられた多くの感想をお届けする。

想像するより身近にある「子宮頸がんのリスク」

友だちがHPVワクチンを打つよ、って言って、どうしてって聞いたら、『コウノドリ』を読んでみたほうがいいよ、って教えてくれました。読んでびっくりした。母親も学校も教えてくれなかった。もしも、妊娠中に子宮頸がんに罹ったら、ものすごく苦しいと思う。予防できることはしっかりしておきたいと思った」(15歳・女性)

従妹が昨年、子宮頸がんで亡くなって。まだ、25歳でした。そんなに若くても子宮頸がんに罹って、亡くなってしまうことがあるんだな、ってものすごくショックでした。母親世代が罹る病気とばかり思っていました」(21歳・女性)

中2の娘が学校で、HPVワクチン接種のチラシをもらってきました。以前報道があった副反応のことが気になって、さらにまだ中2だしという思いもあって、チラシを締まったままにしていました。でも、『コウノドリ』を読んで、誰もが罹る可能性があるんだということを知りました。そこから色々調べて安全性もわかったので、昨年12月に1回目を接種しました」(44歳・女性)

2年前、初めて子宮頸がん検診をしたら、再検査の通知が……。詳しく調べたら高度異形成であることがわかり、頸部を円錐切除しました。子宮頸がんなんて自分には関係ないとぶっちゃけ思っていました。でも違った……。早く見つかって切除できたのはよかったけど、定期検診もあってそのたび、『再発していませんように』と祈っています。決して他人事なんかじゃない。セックスをした人は誰でもかかる可能性があるってことを知ってほしいです」(26歳・女性)

どうしても堅苦しく、難しくなりがちな子宮頸がんの課題を『コウノドリ』は、リアルでありながらもわかりやすく、そして読んだ人の心に残る作品として描いている。『コウノドリ』のエピソードはどれも名作ばかりだが、この「子宮頸がん」のエピソードは、医療従事者からも「学校に置いてほしい」「親子、夫婦で読んでほしい」という声が数多くあがっている。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』より
 

4月からついに9価も! 変わるHPVワクチン

子宮頸がんを予防するHPVワクチンは、日本で2013年4月に定期接種がスタートした。しかしながら、副反応に関する報道が過熱し、政府は積極推奨を中止し、HPVワクチンの空白期が出来てしまっていた。その後、副反応に関する調査などが行われ、因果関係はないということから、2021年11月12日に厚生労働省は、子宮頸がんワクチン接種を積極的にすすめる方針を決めた。

現在では、国がHPVワクチンの積極的勧奨を中止してた時期に接種を逃してしまった女性(1997~2005年度生まれの人)に対して「キャッチアップ接種」を2022年4月から3年間、無料でできる機会を設けるなど、国もHPVワクチンに対して積極的に働きかけを始めている。

さらに、この4月からは新たな動きも出てきている。今までは、2種類のウイルスの感染を防げる「2価ワクチン」か、4種類(2価でのウイルスを含む)を防げる「4価ワクチン」の無料の定期接種が行われていたが、より広いウイルスに対応できる「9価ワクチン」も無料接種に追加されるという。これはとても大きな動きだ。また、一部自治体では、男子への無料接種をスタートするところもある

世界のスタンダードからは大きく遅れていたHPVワクチンの状況も少しずつだが変化し始めているのだ。

(C)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』13巻より

しかしながら、未だに進んでいない自治体もある。そしてSNSなどでは、ワクチン反対派と肯定派の間でバトルが展開されている。

「私がこのエピソードを描いたのは、2016年。当時は、国も積極的接種を控えていた時期でした。子宮頸がんのことを描きながら、私自身も何が正しいのだろうかと素朴な疑問を持っていました。あれから約6年、現在はHPVワクチン接種勧奨へと向かい、多くの人たちのHPVワクチンへの印象も変わってきたように感じています。

個人的にそれは素晴らしいことだと思っています。多くの方にHPVワクチンの正しい情報が伝わり、理解され、接種する機会が増えますし、将来的には男子への接種にもつながる。

ですが同時に、HPVワクチンが積極的勧奨となった時、ワクチン接種を選択しない人が尊重されず、叩かれるような社会、世の中にはなって欲しくはありません。

正しい情報が伝わる中、ワクチン接種を選択する人、しない人がこの先もいるかと思います。その時、お互いがお互いの思いや気持ちを理解し、いたわりのある考えや距離で近い将来、子宮頸がんで苦しむ女性がいなくなる日本へと向かってくれたらと切に願っています」(鈴ノ木さん)

3月4日は『国際HPV啓発デー』。2018年から始まったこのイベントでは、全世界80以上の団体・組織がHPV(ヒトパピローマウイルス)について知り、予防について考える日として設定している。

そして、鈴ノ木ユウさんのご厚意で、1週間期間限定で、「子宮頸がん」のエピソードを再び無料試し読みできることになった。

子宮頸がんを罹患する女性本人の気持ちはもちろん、夫の気持ち、母の気持ちなども丁寧に描かれている。誰もが当事者の気持ちになって読めるエピソードだ。名作揃いのエピソードを持つ『コウノドリ』の中でも、とっておきの作品をぜひこの時期に読んでみてほしい。