踏み入れてしまった職場での不倫
そうこうしているうちに子どももふたり授かった。だが子どもができ、子育てに追われるに連れて「まだまだ男でいたい」「でもプロの女性は嫌だ」「だけれども女性が欲しい」というヒロユキさんの良くない蟲というか業が出てきた。
「女房と子どもがいるから男は封印して……という選択肢は俺にはないです。いつでもイケイケドンドンです」
もっとも男でいるにはカネと時間が要る。それに何より手間がかかる。その手間のひとつが出会いの場だ。職場での出会いとなると、幾分か、その手間が省ける。当時のヒロユキさんにとって、それはまさに「願ったりかなったり」(本人談)だった。
「職場にも女性はいます。もっとも自衛隊という職場は男性社会、およそ10人にひとりくらいの割合しか女性はいません。ある意味、職場の女性と親しくなるのは大変な激戦です」
自衛隊に限らず、今やどこの社会でも、職場での不倫は誰からも歓迎されない。だが、高卒後、新卒で自衛隊入隊。ここで叩き込まれたのは「2位以下は負け」という徹底した競争意識、そして勝利への執念だ。

「いろいろ高いハードルはあったのですが、思ったよりもあっさりと飛び越えてしまいました――」
こうして既婚の身でありながら、同じ職場の女性との不倫関係にヒロユキさんは足を踏み入れてしまった。
「いや、もう職場不倫は、仕事を楽しくしますね。職場に通うのが楽しくてね」
陸上勤務となり手取り収入が減ったものの、職場での不倫は、経済的にも負担が少なく、その点でもヒロユキさんに打ってつけだった。そんなバラ色の不倫生活を職場で続けつつ、家庭も円満にというのが、当時のヒロユキさんが描いていた人生設計図である。
だが、そんな都合のいい生活は長くは続かなかった。