出生数80万人割れで、いよいよ到来する「大学淘汰」時代

政府は「もうすべての大学を守らない」

想定より11年も早く

ついに出生数が80万人を割り込んだ。厚生労働省が2月28日に発表した人口動態統計の速報値によると、2022年の国内の出生数は前年比5.1%減の79万9728人となった。

by Gettyimages

もちろん80万人という絶対数も問題なのだが、それ以上に大きいのは出生数減少のスピードだ。現在20歳の人たちは約120万人、小学校1年生はざっと100万人いる。この間、14年ほどかけて20万人減ってきたわけだ。ところがその後の6年で80万人を割った。同じ20万人減るのにわずか6年しかかからなかったのだ。厚労省は人口の将来推計をしてきたが、出生数80万人割れは、その想定より11年も早く訪れた。

「我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています」

岸田文雄首相は1月の施政方針演説の中でこう述べ、80万人割れに対して強い危機感を示した。まさしく、社会機能が大きく損なわれる危険性に直面している。

その影響が真っ先に現れるのが「子ども関連市場」である。わずか6年でマーケット規模が20%も縮小するわけだから、経営が成り立たなくなる事業者も出てくるだろう。売り上げが20%減っても黒字を維持できる企業などそうそうない。

だが、そうした物販などは、対象層を拡大したり、輸出に活路を見出すことができる。ところがそう簡単に身動きができない業種がある。「学校」だ。校舎などの設備を持って、教職員などの人員を抱えているため、固定費が大きい。人口減少は売り上げの減少に直結しかねず、何も手を打たなければ経営が立ち行かなくなる。前述の通り、小学校入学者は現在の100万人から80万人にこの6年の間に減っていくので、まずは小学校がその影響を受けるのは確実だ。

 

ちなみに小学校に上がる前の幼稚園ではすでに経営破綻するところが出始めている。都市部ではまだまだ保育所や認定こども園などの不足が続いているものの、人口減少が著しい地方では廃業する幼稚園も少なくない。私立幼稚園数だけを見れば2018年度の6538園から2022年度には6152園へと6%減った。

小学校もすでに効率では統廃合が始まっているものの、私立小学校数は変わっていない。これまで都市部を中心に「公立離れ」が進み、結果的に私立小学校の入学者は増えてきた。今後も公立小学校のシェアをどれだけ食っていけるかが私立小学校の存亡に関わってくるだろう。

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