2023.03.17

小惑星「リュウグウ」の天体衝突は穏やかだった! 高圧鉱物から迫る太陽系の謎

新鉱物ハンターが解説、高圧鉱物の世界2

海洋研究開発機構(JAMSTEC)高知コア研究所は、世界でも有数の分析装置があります。それを駆使して行われている研究のひとつが「高圧鉱物」の研究です。

新発見鉱物『ポワリエライト』から太陽系の形成、地球の中身が見える!」では、特殊な条件下で生まれる鉱物を調べることで、地球内部の構造や太陽系の成り立ちなど、さまざまな謎に迫ることができることを紹介しました。

実は、この研究所では、あの「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰ったサンプルの分析も実施されました。ほんのわずかな量の貴重なサンプルから、一体どれだけのことがわかるのでしょうか。

分析装置の高い性能によってもたらされた知見は、実に驚くべきものだったそうです。そこで新高圧鉱物「ポワリエライト」を発見するなど「鉱物ハンター」としても有名な物質科学研究グループの富岡尚敬主任研究員から、高圧鉱物研究の現在と未来について詳しくうかがいました。

【写真】富岡尚敬主任研究員富岡尚敬主任研究員(撮影:市谷明美/講談社写真部)

結晶構造を見る方法は?

――ポワリエライトのような高圧鉱物の研究では、超微小の世界を見なければいけないことがわかりました。そもそも結晶構造という超ミクロの世界はどうしたら見えるのでしょうか?

試料分析に使っている透過型電子顕微鏡は、高電圧で加速した電子を試料の上から照射して透過させる仕組みです。

【写真】透過型電子顕微鏡と試料の装着左図:透過型電子顕微鏡 上の電子銃から撃ち出された電子は趙薄膜試料を透過し、電子レンズ(磁界レンズ)によって拡大された像を蛍光板やCCDカメラに投影する。物質の微細構造や結晶構造を調べることができる。 右写真:先端に観測したい試料を載せて電子顕微鏡の本体に差し込む。(図作成:鈴木知哉、撮影:市谷明美/講談社写真部)

でも、電子は物質内の原子と相互作用しやすいので、試料を薄く加工しなければ通り抜けません。それも、100〜200ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)という超薄膜にする必要があります。

そのために使われるのが、「集束イオンビーム」と呼ばれる装置なんです。これはガリウムのイオンをビームにして上から照射することで、試料を削っていくんですね。もともとは主に半導体を加工して、電子顕微鏡で観察するために使われていましたが、それが鉱物の電子顕微鏡試料づくりに転用されるようになりました。

70ミクロンの地球深部探査船「ちきゅう」

機器の操作を練習するためにつくったものですが、この装置を使ってJAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」を描いてみました。これはおおよそ全長70ミクロン(1ミクロンは100万分の1メートル)程度のサイズなんです。いかに細かい作業ができるかということが、わかっていただけると思います。

【写真】全長約70ミクロンで描かれた地球深部探査船「ちきゅう」全長約70ミクロンで描かれた地球深部探査船「ちきゅう」(図版提供:富岡尚敬/JAMSTEC高知コア研究所)

私が研究で主に扱うのは、表面を平らに磨いた岩石薄片です。薄片とはいえ、厚さが30ミクロンもあるので、そのままでは電子顕微鏡では見られません。そこで、岩石薄片の中で電子顕微鏡で、細かく見たい部分だけを集束イオンビーム装置で削って超薄膜にする作業を日頃からよくやっています。加工する位置を正確に決めたり、イオンビームのダメージを与えないよう慎重に作業するので、ひとつ試料をつくるのに2〜4時間ぐらいかかりますね。1日に2つか3つできればいいほうでしょうか。

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