NHKスペシャル「超・進化論 第1集 植物からのメッセージ ~地球を彩る驚異の世界~」は、
生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている! NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。
書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』で、最初に紹介するのは「植物」。
私たちの地球で陸上にいる全生物の重さを足し合わせると470ギ
しかし、植物は知性とはほど遠く、人間よりもずっと下等な存在だと考えられてきた。だが、それは果たして本当なのか──。
東フィンランド大学のジェームス・ブランドさんが突き止めたのは、植物の“会話物質”。なぜ、害虫に食べられた木の周りの木々がそれほどダメージを受けないのか、という疑問の解決の先に、さらに大きな発見があった。
連載第1回は<「今、私食べられている!」植物にも動物のように“感覚”があった! 可視化された事実が凄すぎた!>はこちら。
なんと! 種を超えて危険や芽吹き時を周りに知らせていた
おとぎ話の世界では、擬人化された植物や動物たちが、あいさつを交わしたり、困りごとについて話しこんだりする。そんな場面は現実にはあり得ないと思われるかもしれない。

だが今、最先端の科学は、植物が“おしゃべり”をしているという驚きの事実を突き止めている。植物たちは一体どんなおしゃべりをしているのか。
「植食性昆虫に葉をかじられた植物は、いくつかの揮発性(常温で蒸発して気体になりやすい性質を持つ)の化学物質を放出します。この化学物質のブレンドこそ、植物たちの会話物質。『私は今、植食性昆虫に攻撃されている。あなたも攻撃されるかもしれない。早く準備して!』と危険を知らせるメッセージを送っているのです」
そう語るのが、東フィンランド大学環境・生物科学部教授のジェームス・ブランドさんだ。研究フィールドとする北欧フィンランドの森は、ヘラジカや野ウサギなど、多くの生き物たちを育んでいる。そんな森に生育するシラカバはしばしば虫の大発生に襲われる。ブランドさんらが注目したのは、ある不思議な現象だった。
「植物同士がコミュニケーションをとっていることを示唆する現象は、以前からいくつか知られていました。そのひとつは、ある植物がダメージを受ける一方で、なぜかその周囲の植物がそれほどダメージを受けていないという現象です」
一体なぜそんなことが起こるのか。ブランドさんらが虫に食べられたシラカバの葉の周辺の空気を集めて分析したところ、食べられていないシラカバとは明らかに異なるさまざまな化学物質が放出されていた。この特有の化学物質の組み合わせが、植物の発するメッセージであるという。

この物質の特有の組み合わせが、「食べられている!」という植物の発するメッセージになっている。(c)NHK
私たちは筑波大学の木下奈都子さんの協力を得て、植物同士がコミュニケーションをする様子をリアルタイムで可視化することに挑んだ。世界中でまだ誰も成功していない画期的なイメージングへの挑戦だ。