2023.03.12
# 民俗学
# 日本史
これは不気味…日本に残された「“河童の手”のミイラ」の数々、その伝承と由来を探ってみる
昔の人は、興味深い記録をたくさん残している。そうした歴史史料のなかには、河童や鬼や人魚、龍や天狗といった、妖怪とも幽霊とも言えない「不思議な生き物」=幻獣がいる。ここでは、なかでも最も有名かつ珍奇な例の多い河童を紹介したい(以下では、『日本幻獣図説』(湯本豪一著)を参照する)。
「幻獣」とは何か?
〈日本には幻獣といえる不思議な生き物はどれほどいたのだろうか。神武天皇の東征のときに現れた八咫烏(やたがらす)のように、まさしく伝説上の幻獣は措くとしても、実際に目撃談が残されたり、描かれて記録されたり、ミイラや剝製として現存するものだけでも決して少なくない。
その種類も多様で、河童や人魚のように誰でも知っているもの、人面牛体で未来を予言する件(くだん)、雷のときに空から落ちてくる雷獣など、江戸時代には河童や人魚と同じくらい有名な幻獣がいるかと思えば、筑前国宗像郡本木村に出没して村人を悩ませた妖術を使う狼のような姿をした幻獣や、淀川で目撃された豊年魚といった地方色の濃いケースもある。
外見上の違いはもちろんだが、単に見たこともない生き物として認識されているものから崇められているものまで幅広く、予言獣のように自ら積極的に人間界にコンタクトをとってくるものさえいる。というように幻獣の特徴も同じではない。ここでは、そうした幻獣たちの姿を追ってみることとしよう。〉