2023.03.17

経産省の「事務次官レース」がデッドヒート…原発の「運転期間延長」のウラで起こっていた“出世争い”

原発回帰の動き

岸田政権が、原発の運転期間の上限を現在の60年から延長することを認める方針だ。福島第一原発事故以降の原発政策を大きく転換する「原発回帰」の動きだが、その筋書きを描いたのが、経済産業省の飯田祐二経済産業政策局長である。

東大卒業後の'88年に旧通商産業省に入省した飯田氏は、秘書課長や資源エネルギー庁次長、官房長などを経て、昨年7月に経済産業政策局長に就任した。事務次官ルートの重要ポストを歴任し、「政治家の懐に飛び込むのがうまく、敵が少ない」と評されている。ある政界関係者は「前経産大臣の萩生田光一自民党政調会長や、西村康稔経産大臣からの信任も厚い」と語る。

内閣官房GX(グリーントランスフォーメーション)実行推進室長も兼務する飯田氏は「GX基本方針」にも政権の意向を汲み、原発推進策を盛り込んで手堅くまとめた。同期の次官レースでは、藤木俊光官房長らを一歩リードする形となった。

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多田明弘事務次官の今夏の退任が確実視される中、次期次官は保坂伸資源エネルギー庁長官('87年入省)と飯田氏の一騎打ちとなる公算が大きい。ただ、大転換した原発政策が軌道に乗るかは未知数。昨年8月に岸田首相が指示してから半年しか経っておらず、野党からは「結論ありきだ」との批判の声も上がる。

エネルギーの安定供給や脱炭素化に原発が必要なのは否めないが、世論は慎重だ。飯田氏が国会論戦を無事に切り抜けられるかどうかで、経産省の次期体制が決まる。

「週刊現代」2023年3月11・18日合併号より

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