2023.03.18

ものごとの「目立つ部分」にばかり飛びついて、冷静に吟味をしない…「群衆」がもってしまう“危険な性質”

SNSをはじめとしたインターネット上のコミュニケーションや、情報の発信や収集に力と時間をそそぎ、他者の動向につねに注意を払いがちな現代人。

「群衆」と化したオンライン上の言葉の数々、その影響を受けないではいられない時代が到来してひさしいです。

そんな時代を予見し、警鐘を鳴らした人間がいました。19世紀末に活躍したフランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンが書いた『群衆心理』は、現代を生きる私たちに、有効な方法論を指し示します。

かくもわかりやすく、そして浅はかで、ときに危険でもある、群衆の〈思想〉と〈推理力〉と〈想像力〉。この3つについて『群衆心理』を一部抜粋、編集しながら紹介していきます。
 

群衆が染まりやすい2つの思想とは?

思想は、二つの部類にわけることができる。

第一の部類には、そのときどきの影響を受けて発生する偶発的な、一時的な思想を入れよう。

これは、例えば、ある個人、またはある主義に対する心酔[しんすい]のごときものである。

もう一つの部類には、環境、遺伝、世論などによって非常に強固なものとなる根本的思想を入れよう。

これは、かつての宗教思想、今日の民主主義社会思想のごときものである。

photo by gettyimages

根本的思想とは、おもむろに流れつづける河の水全体にもたとえられようし、一時的思想とは、たえず変化して、河面をかき乱すさざ波、実際には重要なものではないが、河自体の進行よりも人の眼につきやすいさざ波にもたとえられよう。

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