2023.03.20

集団や群衆を思いどおりにあやつろうとたくらむ指導者たち。その“意外な実像”

「群衆」と化したSNSをはじめとしたオンライン上の言葉から影響を受けないで生きていくのはもはや難しいかもしれません。

そうした時代だからか、自分で考え、判断し、行動するための主体性を見失い、極端な考えから、また極端な考えへと、さまよってしまうこともしばしば。

そんな現代を予見したのが、19世紀末に活躍したフランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンです。彼が書いた『群衆心理』は、現代を生きる私たちに、さまざまな有効な方法論を指し示してくれます。

「群衆」にはかならずと言ってよいほど、指導者がいるのをご存知でしょうか? 私たちを良い方向にも悪い方向にも導きかねないこの指導者たち。そもそもどういった人間なのか?

ル・ボンが書いた古典的名著、『群衆心理』からその実像を探ります。

群衆は指導者なしにはすまされない

動物の群にせよ、人間の群にせよ、ある数の生物が集合させられるやいなや、それらは、本能的に、首領、すなわち指導者の権力に服従する。

photo by gettyimages

人間の組織する群衆の場合にあっては、指導者は重要な役割を演ずる。指導者の意志が中軸となって、その周囲に、かずかずの意見がつくられ、統一されるのである。

群衆は、統率者なしにはすまされぬやからの集りである。

指導者も、最初は多くの場合、自らある思想に心酔した被指導者であって、やがてその思想の使徒になったのである。

思想が、彼の骨身[ほねみ]に徹して、それ以外には一切のものが消えうせ、どんな反対意見も、彼には誤謬や迷信と思われるほどになる。

  • 【新刊】バラの世界
  • 【新刊】ツァラトゥストラはこう言った
  • 【新刊】異国の夢二
  • 【学術文庫】2023年7月新刊
  • 【選書メチエ】2023年7月新刊
  • 【新刊】新版 紫式部日記 
  • 【新刊】妖怪学とは何か
  • 【新刊】人間非機械論
  • 中華を生んだ遊牧民
  • 室町幕府論