2023.03.11
宇宙には、宇宙の法則を「検閲する存在がいる」だって…? 「宇宙検閲官仮説」の“魅惑的な世界”を追う
「宇宙検閲官仮説」
なんとも不可思議で魅惑的な響きです。この文字の並びを見ているだけで、つぎつぎと疑問が湧いてきます。
宇宙を検閲する? 誰が? 何を? いったいどうやって? なぜ宇宙に「検閲官」がいるなんていう、いっけん突飛に見える仮説が提示されたのか?
前回は、この仮説において「検閲官」が検閲をしているその対象=「特異点」について、大阪工業大学教授の真貝寿明さんが解説しましたが、今回はいよいよ、宇宙検閲官仮説そのものについて解説していきます。
(この記事は、真貝寿明『宇宙検閲官仮説』を抜粋・編集したものです)
厄介な「特異点」
物理法則を考えるうえで、特異点の存在は厄介なものです。その点から先は、空間的にも時間的にも、計算することができなくなるからです。しかし、特異点定理は、普通のエネルギー条件をみたす物質であれば、一般相対性理論を考えるかぎり、きわめて一般的に特異点が存在することを示しています。私たちはどう考えたらよいのでしょうか。
ペンローズとホーキングが示した特異点は、重力崩壊によって発生する特異点と、宇宙初期に存在したはずの特異点の2つです。このうち後者の宇宙初期の特異点については、私たちが宇宙の始まる瞬間を描く物理理論を完成させれば、すなわち、一般相対性理論と量子論を融合した量子重力理論が完成すれば、解決するかもしれません。
現実に私たちは膨張する宇宙に存在しているのですから、何らかの解決策があるはずです。特異点の定義も、エネルギー条件も変更されて、宇宙初期特異点について悩まずに済むことが期待されます。