NHKスペシャル「超・進化論 第1集 植物からのメッセージ ~地球を彩る驚異の世界~」は、
生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている! NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。
書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』で、最初に紹介するのは「植物」。
私たちの地球で陸上にいる全生物の重さを足し合わせると470ギ
しかし、植物は知性とはほど遠く、人間よりもずっと下等な存在だと考えられてきた。だが、それは果たして本当なのか──。
花は恐竜の時代に出現した。この花が地球上の生物の多様性を急激に進めたとわかってきた。それまで受け身だった植物が、花によって一気に繁栄し、地球の生き物すべてに影響していったのだ。
連載第1回は<「今、私食べられている!」植物にも動物のように“感覚”があった! 可視化された事実が凄すぎた!>はこちら。
生き物の種類が恐竜時代後期に激増
約4億5000万年前、水際から陸へ進出を果たしたのが植物だ。それまで陸地は、砂と石がどこまでも広がる不毛の大地だった。
化石から、陸に上がった初期の植物は枝のような単純な形をしていたと考えられている。しかしやがて根、葉、茎の区別を持つ複雑な構造の植物が現れた。根から茎を通じて体内に水を溜めておきやすくなったおかげで、植物は水際から乾燥地へと生活の場を広げた。コケ植物、シダ植物、裸子植物などさまざまな植物が大地を緑に染め、陸地の大部分を支配していった。
しかし、それでも1億5000万年くらい前は、地球上の生物の多様性は今と比べるとかなり低かったと推定されている。当時、陸上生物の総数は現在の10分の1程度だったとも考えられている。種数が急激に増え、多様性が高まるのは、恐竜時代の後期・白亜紀からだ。
何が生物種の劇的な増加をもたらしたのか。中央大学理工学部生命科学科教授の西田治文さんらはそのヒントとなる恐竜時代の化石を発見している。西田さんは、見つかったばかりの大変貴重な化石を見せてくれた。それは、わずか数ミリメートルの小さな花の化石だった。
「花の誕生こそ、地球の生命史の大転換です」(西田さん)
花は、恐竜の時代に初めて地球上に誕生した(花すなわち被子植物の出現時期については諸説あるが、化石をもとにした推定では、白亜紀の初期と考えられている)。なぜ、花の誕生が、生物の多様性の急激な増加と関係があるのか。
それを教えてくれる貴重な証拠のひとつが、最近ミャンマーで発見された。同じく白亜紀、約9800万年前の琥珀化石だ。私たちは、発見した中国科学院南京地質古生物研究所の蔡晨陽さんに、その琥珀化石を見せてもらった。恐竜時代の琥珀に閉じこめられていたのは、甲虫。その糞の中をレーザー顕微鏡で見ると、ぎっしりと花粉がつまっていることがわかった。当時の昆虫が、花の花粉を好んで食べていたことを示している。そして、虫の体にも花粉がたっぷりついていた。

左上側の円筒形の糞にも花粉がたくさん混じっていた。(c)NHK
花は、いつしか「花粉はここにあるよ」といったようなメッセージを発し、虫を呼び寄せることができるようになったと考えられている。虫が花粉を食べに花にやってくる一方で、植物は虫のおかげで離れた場所にいる別の仲間に花粉を運んでもらえる。植物は虫とのこの画期的な関係性によって、効率よく確実に子孫を残すことができるようになったのだ。