2023.03.23
# 細胞 # 遺伝子

鳥が飛ぶ2億年前から、昆虫は飛んでいた! 生物史上初めて飛んだ昆虫はどんな形をしていた?

超・進化論(12)

生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている! NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。
書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』では、「昆虫」の謎が解き明かされる。
私たち取材班が注目したのは、昆虫の驚異的な適応能力。彼らはさまざまな能力を身につけ、地球上のあらゆる場所に適応してきた。
今回は、鳥が飛び始める2億年も前、誰もまだ空を飛んでいなかった時代、昆虫がなぜ、いち早く空中へ進出できたのか、その理由に迫った。
【昆虫編第1回】
鳥も飛行機も敵わない! あたり前のように飛ぶ、昆虫の飛び方は“超ハイテク”&“型破り”!はこちらから。
*NHKスペシャル「超・進化論 第1集 植物からのメッセージ ~地球を彩る驚異の世界~」は、第64回科学技術映像祭において内閣総理大臣賞(自然・くらし部門)を受賞!

昆虫はいつ頃飛び始めたのか

昆虫の祖先が海から淡水域を経て、陸地に現れたのは今から4億年ほど前のこと。私たち脊椎動物の祖先より4000万年ほど早い上陸だった。下の写真は昆虫の祖先の最古の化石。現在のトビムシに近い仲間だ。

昆虫の祖先の最古の化石。トビムシに近い仲間。
昆虫が陸地に現れた4億年ほど前、陸地では、最初の森林が形成され始めていた。画像提供 ロンドン自然史博物館

昆虫が飛び始めたのは今から3億5000万年前頃だと考えられている。陸上進出から数えると約5000万年後のことだ。昆虫はどのような過程をたどって飛ぶようになったのだろうか。

当時、地球には、最初の森林が広がっていた。高さ5メートルにも達する巨大なシダ種子植物(裸子植物でありながら、原始的な花粉を持ち、種子を作る植物。約1億4500万年前から約6600万年前。白亜紀に絶滅し、現存していない)が大地を覆い、その幹を大きさ1センチメートルほどの昆虫が行き来していた。まだ、種類も数もごくわずかで、シダの原始的な花粉などを食べていた。

翅はなく、飛ぶことができないため、歩いて花粉のある目的地まで移動しなければならなかった。途方もない時間、幹や枝を移動中に何度も落下をくり返したはずだ。このとき、より長く、より遠くに飛べたものが、食べ物を得たり、繁殖相手と出合ったり、敵から逃げたりする上で有利になり、生き残っていったに違いない。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大