〈(昔の親は)何をしてやろうかと考えた。けれどいまの親の愛情は『何をしないか』を考えなければならない〉
'07年に亡くなった教育心理学者・河合隼雄氏は、著書の中で、いみじくもこう書き残している。
良い学校に合格するために塾に通わせる。音楽の素養を身につけるためにピアノを習わせる--。子育ては「足し算」の発想になりがちだ。
だが、「超一流」を育てた両親たちの振る舞いをつぶさに見ていくと、吉井氏が言うように、「何をするか」ではなく「何をしないか」に深く注意を払っていることがわかる。
そもそも、「やりたいことを楽しくやらせる」がモットーだった大谷の父・徹さんは、息子に「野球の練習をしろ」と注意することは一切なかった。
楽しく野球をやらせる…。それは、朝から晩まで父とバッティングセンターにこもっていたイチローのような、一昔前のプロ野球選手の成功譚とは一線を画する意識だ。
〈160kmを投げる〉
〈メジャーに行く〉
〈メジャーに行く〉
大谷は、幼い頃から大それた目標を、臆することなく口にしてきた。
この背景にも、「子供が思ったことを大人の顔色を窺わずに言えるように」と願う両親の深慮がある。