「当時、お父さんは『挫折して中卒になったって、生きていく道はいくらでもある』と語っていました。もし親御さんが『絶対テニスで成功できなければダメだ』というプレッシャーをかけていたら、錦織があそこまで才能を開花できたかわかりません」(テニス協会関係者)

前出の尾木氏が、「とても素敵な親御さん」として名前を挙げるのが、冬季五輪で2大会連続となるフィギュアスケート金メダルを獲得した羽生結弦の父・秀利さんだ。
「以前、一度だけお会いする機会があったのですが、優しく謙虚で、教育が専門の私に対しても、『息子をこうやって育てた』といった話は何もおっしゃらなかった。お母さんも同様で、メディアに出られたことがない。
頑張っているのはあくまで『ゆづ』(羽生の愛称)であり、自分たちは表舞台に出ないという意識がおありなのでしょう」
実際、羽生の両親は取材を一切受けず、羽生自身も家庭環境を語ったことはない。
ただ、尾木氏は「ご両親は、息子を他の子供と比べないよう育てたのではないか」と推測する。
「羽生選手は誰かに勝つとか、倒すという言葉は口にしません。彼にあるのは、『4回転アクセルを完璧に成功させる』というような自分との闘いだけ。他人を意識せず、自分自身の心技体の向上に集中することができた家庭環境のおかげではないでしょうか」