2023.03.12
# 音楽

《失恋の名曲》60万枚ヒット『ひとつ屋根の下』主題歌…チューリップ『サボテンの花』に財津和夫が込めた想い

人生において失恋は誰しもが通る道。悲しみに打ちひしがれながらも、前を向いて歩いていくしかない。若きフォークの旗手はそんな人間の姿を切なく歌った。チューリップの名曲『サボテンの花』の魅力を財津和夫を育てたプロデューザーや演出家、放送作家が語った。

前編『チューリップ・財津和夫の『サボテンの花』誕生秘話を語りつくす…『ひとつ屋根の下』主題歌として60万枚ヒットを達成した《失恋の名曲》』よりつづく。

藤井伊九蔵/'40年、埼玉県生まれ。元テレビ西日本プロデューサー。財津和夫のほか、井上陽水、武田鉄矢などの名だたるミュージシャンを福岡で育てた

永山耕三/'56年、東京都生まれ。『ひとつ屋根の下』のほか、『東京ラブストーリー』『ロングバケーション』など数多くのヒット作の演出を手がけた

田家秀樹/'46年、千葉県生まれ。'69年創刊の『新宿プレイマップ』編集者、放送作家、ノンフィクション作家、ラジオパーソナリティと幅広く活動している

『サボテンの花』/'75年2月にチューリップが出した8枚目のシングル。'93年、『ひとつ屋根の下』の主題歌となり、ヒット。60万枚の売り上げを記録した

※チューリップは'00年に再々結成し、オールドファンを熱狂させた

JASRAC 出 2301535-301

斬新な'75年版、耳馴染みの良い'93年版

永山 あの時代は、フォークで吉田拓郎が出てきて、ロックなら矢沢永吉のキャロルなんかが人気でしたけど、オフコースとチューリップは優れた「ポップス」という感じでしたね。

藤井 僕は『サボテンの花』でも、最後の歌詞が好きなんですよ。〈この長い冬が終るまでに/何かをみつけて生きよう/何かを信じて生きてゆこう/この冬が終るまで〉

常に新しい何かを追い求める、財津らしい歌詞だと思う。

田家 藤井さんの指摘する新しさという点でいうと、フォーキーな名曲のイメージがある『サボテンの花』ですが、'75年版はすごく斬新な曲でもあるんですよね。

まず、あの印象的なイントロ、エレキギターのアルペジオ。それが、曲を通して続いていき、ベースやドラムの音は控えめ。そして、ソリーナ(ストリングアンサンブル)の豊かな響きが奥行きを広げている。

Photo by gettyimages
 

対して、平成の大ヒットドラマ『ひとつ屋根の下』の主題歌となった'93年版はイントロこそアルペジオは同じように鮮烈ですが、ドラムやキーボードの音などがもっとわかりやすく響き、耳馴染みがいい。

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