2023.03.15

爆竹をカラスに仕掛けて大騒ぎ! 西太后を取り巻く宦官たちの残忍と陰湿。

太后の陰に隠れて宮廷を支配

西太后が絶対権力を握る清朝の宮廷で、後宮をはじめ紫禁城内の整備や皇族の生活全般を管理したのが宦官(かんがん)だった。宦官は太監ともいい、去勢して男を失った男たちである。『西太后に侍して 紫禁城の二年間』(太田七郎、田中克己訳、講談社学術文庫)では、宮廷特有の習慣と、きびしい競争社会のなかで、宦官や女官たちが見せる奇妙な生態にも、著者・徳齢の鋭い視線が向けられていた。

 

恐怖の宮殿監督・李蓮英

徳齢が西太后に仕え始めたとき、二人の女官が部屋を訪ねてきて「あなたが困った時には自分で身を守ることができるように、すこし知らせてあげたいのよ」と宮廷の内情を語った。

〈「この場所がどんなにいけない処かあなたは御存知ないのだし、とても見当はおつきにならないわ。想像もつかないほどの責折檻や苦しみなのだもの。(中略)陛下はただ今のところはあなたにひどく御親切だけれど、陛下がお飽きになるまで待ってて、どうなさるか見て御覧なさい。もう私たちは充分見せつけられて宮廷の生活というのがどんなものかわかったわ。もちろんあなたも、李蓮英(宮殿監督)が老祖宗(ラオツツォン=西太后のこと)の蔭にかくれてこの宮中を支配していることはお聞きになったでしょう。私どもは皆あの男を怖がっていますの。」〉(114頁)

ある日、爆竹が炸裂する大音響で、西太后が昼寝から目覚めて激怒した。大騒ぎして走り回っていた宦官たちは、李蓮英が家来の宦官を引っ立てて来るのを見て立ちすくんだ。どうやら、この若い宦官が、カラスをつかまえて悪ふざけをしたらしい。

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