2023.03.16

吉か凶か? 未来を告げる予言獣・件(くだん)の出現に大騒ぎする日本人

妖怪でも、幽霊でも、未確認生物でもない。けれど、多くの日本人が知っている幻獣。ここでは、河童、鬼、天狗、人魚、龍、雷獣などのうち、コロナ禍に話題になったアマビエのように、未来を告げる「予言獣」を紹介したい(以下では、『日本幻獣図説』(湯本豪一著)を参照する)。

〈幻獣のなかには未来を予言し人間に伝えるものたちがいる。彼らは「予言獣」と呼ばれる。しかし、「予言獣」という言葉は必ずしも一般的ではなく、具体的に何を指すのかイメージがすぐには浮かばない人もいるだろう。それくらい、「予言獣」はまだまだ知られていない分野といえる。

しかし、それは今まで予言獣に関する資料があまり発掘されていなかったからで、予言獣が重要でないというわけではない。むしろ、予言獣は人間とコミュニケーションをとる幻獣としてきわめてユニークな存在で、予言獣を調べることは幻獣の本質を知るうえで大きな意義を有すると思われる。それは、そこに社会状況が浮き彫りにされているからであり、予言獣を通して父祖たちの声なき声に耳を傾けることができるからなのである。〉

 

件(くだん)という予言獣

〈さて、一口に予言獣といっても一様でない。もっともよく知られているのが体が牛で顔が人間という件(くだん)だ。件の予言は決して違うことがないことから、江戸時代の証文の最後に「如件(くだんのごとし)」と記すのは、そこに書かれた内容に相違なく、それを必ず守るという意味だという説明がなされることがあるくらいだ。

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